金利上昇で騒ぐ「頭の悪い」人たち 髙橋洋一が語る バーナンキの言葉
それ以外の理由としては、これまでのデフレ時代には金融機関の稼ぎ頭が、「債券部署」だったということがあるかもしれませんね。彼らは貸出業務をしていませんから、名目金利しか見ていません。そして名目金利が下がると大騒ぎです。これまでのデフレ時代には、そういう人たちが金融機関に「飯を食わせてきた」というのは事実です。
そして、そこのお得意様であるシンクタンクのエコノミストというのも、そういう債券部署の意向に合わせて、経済見通しを語ってきたのではないでしょうか。ですから、「金利=名目金利」という頭になってしまっていて、それが少し上がるだけで「大変だー!」となる。「長期金利の上昇」を騒ぐ人に、金融機関のひも付きエコノミストという経歴の方が多いのも、そういう事情があるのではないかと思っています。こんな話ばかりで、うんざりしますね。
実質金利が下がって名目金利が少し上がるというのは、ある意味で理想的です。債券から貸し出しへのシフトを加速しますから。貸し出しが増えなければダメと言っている人が、「名目金利上昇は問題だ」と主張するのは矛盾していますが、そういう人が多すぎます。
バーナンキも理解に苦しむ日銀関係者の質問
――そういう日本の状況について、バーナンキはどう思っているのでしょうか?
それについては面白いエピソードがありますよ。以前、バーナンキが日本に来て講演したことがあります。その講演も『リフレが正しい。』に入れておきました。そのときにも日銀関係者が「もしも長期金利が上昇したら……うんぬん」という質問を彼にぶつけたんです。
名目金利と実質金利の違いを踏まえないで、そんなことを聞くものだから、バーナンキもきっと理解に苦しんだでしょうね。「え? なんでそんなこと聞くの?」と、そんな感じだと思います。
でも、バーナンキという人は本当にやさしいんですよ。そうした「愚問」にすごくわかりやすく丁寧に答えていました。
講演中で「債務の転換(bond conversion)」に言及したりしているのも、そういう背景があったからです。これは要するに、日銀と政府を合体した「統合政府」で考えれば、日銀が保有する国債(資産)は、それに相当する政府が発行した国債(負債)で相殺され、統合政府のバランスシート上には存在しないことになるため、リスクを減らせるというロジックです。
プリンストン大で彼の講義を聞いていた私からしたら、本当にすごーく親切にしゃべっているなと感じました。「なんて『いい人』なんだろう……」とため息が出る思いでしたね。