松下幸之助「派閥をつくる会社はダメになる」

経営の神様が問わず語りに語ったこと

それに物というか、材料とか、そういうのもいるわな。それも元をさかのぼれば、天下のもんといえるわ。人材もそうやな。人というのは誰のものでもない。これまた天下のもんや。いわば経営の基本である人、物、カネ、これすべて公のものと言えるわな。そやろ。

そうであるとすれば天下の人、物、カネをあずかって営む企業というものは、これまた天下のものと考えんといかん。個人のもんとは言えんな。で、公のものということになるわな。そうであるとすれば、企業は社会のため、世間の人たちのため役に立つような働きをせんといかんということになる。

だから、われわれの会社は、個人の会社ではありません。公の、天下の会社でありますよ、われわれは私のために仕事をするのではない、われわれ自身だけのために経営をしているのではない、社会の人々のため、社会の発展のため、人々の幸せのために仕事をするんですよ、ということになる。そういうことをみんなに話してきた。

自分たちは社会のために働いている

そしたら社員の人たちが、そうか、と。自分たちは自分たち自身のためだけではなく、社会のために働いておるんだ、と理解してくれた。そうであれば、なお一生懸命に仕事に取り組まんといかん、ということになった。一層誇りを持って仕事に取り組むようになった。まあ、いわば公に尽くす心意気というものが、社員のなかに生まれてきたんやな。それで会社が一段と発展したんや。

会社が発展した理由はまだいろいろあるけど、こんなもんやろうな、一応は。

うん、わしのいうことを、従業員諸君は聞いてくれたな。わしの言わんとするところを、思いを、社員の人たちはよう理解してくれた。わしが今日まで経営をやってこれたのは、社員みんなのおかげやな。いつも心のなかで感謝しておるんや。手を合わせる、そんな心持ちやな。ほんまに。

わしの言うことがつねに正しかった、的確であったとは言えんな。神様ではないからね。それをわしの周りの人たちがよく補佐してくれた。ときにわし自身、指示を出した後、あまりいい指示ではなかったな、と思うものもあったけど、かしこまりましたといって、社員諸君それぞれが、わしの言葉の奥の、わしの思い、心を読みとって、結局は成功せしめるような努力をしてくれた。そのことを、わしはよう分かっておる。

そういうことを思うと、かりに今日のわれわれの会社が成功したというならば、それは90パーセントは、社員の人たちのおかげやな。しみじみ、ありがたいと思う。

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