国民総所得が増えれば、家計所得は増える? 景気・経済観測(日本)

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一方、企業部門(非金融法人+金融機関)の財産所得は、超低金利の継続による利払い負担の軽減を主因として、改善を続けている。企業部門の財産所得(純)は1991年度にはマイナス29.1兆円の支払い超過だったが、2000年度以降は受け取り超過に転じており、2011年度の受取額(純)は8.2兆円となった。

政府部門は低金利によるプラス効果を債務残高の拡大によるマイナス効果が打ち消す形で、1991年度がマイナス4.6兆円、2011年度がマイナス5.6兆円と大きな変化は見られない

海外からの財産所得の受け取り(純)はこの20年間で10兆円以上増加したが、財産所得が増えているのは企業部門だけということになる。

もちろん、所得の分配を財産所得だけで見るのは適切ではない。海外からの財産所得を直接受け取るのは企業だとしても、賃金などの形で家計に分配されれば、家計が潤うことにつながるからだ。

雇用者報酬減り、家計所得は減少

そこで、国民総所得がどのように分配されているのかを部門別の可処分所得(総)の割合から見てみると、企業部門は1990年代前半までは10%台前半となっていたが、1990年代後半から2000年代前半にかけて急上昇し、近年は20%台前半で推移している。一方、家計部門は1980年代初めごろには70%近い水準となっていたが、その後、低下傾向が続き2000年代に入ってからは60%程度となっている(図)。

企業部門は、本業で上げた利益に相当する「営業余剰」は低迷が続いているものの、財産所得の改善幅が大きいために、営業余剰に財産所得(純)を加えた企業所得は景気循環による振れを伴いながらも右肩上がりで推移している。
これに対し、家計部門は景気低迷の長期化に伴う雇用者報酬の減少に、超低金利を主因とした財産所得(純)の減少が加わることで、2011年度の可処分所得は305.9兆円となり、1997年度の332.9兆円よりも27.0兆円少なくなっている。

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