国民総所得が増えれば、家計所得は増える? 景気・経済観測(日本)

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その後、2000年に日本の国民経済計算体系が68SNA(SNAはSystem of National Accountsの略称)から93SNAに移行した際に、国民総生産(GNP)の概念自体がなくなり、同様の概念として国民総所得(GNI)が導入された。これは、国民概念は、海外からの所得の純受け取りを含むので、生産測度よりも所得測度としてとらえられるべき性格のものと考えられたためである。

ここで、GDPとGNIの数値を現行統計(2005年基準)が存在する1994年度以降で比較すると、1994年度は名目GDPが495.6兆円、名目GNIが499.5兆円と両者の差は3.9兆円だったが、乖離幅は拡大傾向が続いている。2012年度の名目GNIは490.2兆円となり、名目GDPの474.8兆円を15.4兆円上回っている。

経常収支が黒字を続けたことで対外純資産が大きく積み上がり、そこから得られる利子、配当などの受け取りが増加しているためである。名目GDPと名目GNIの成長率を比較すると、GNIの成長率が高い年度のほうが多く、その差は18年間の平均で0.1%である。

GNI(国民総所得)が増えると誰が豊かになるのか

安倍首相は6月5日に行った成長戦略第3弾のスピーチで、「最も重要なKPI(Key Performance Indicators)とは何か。それは、『1人当たりの国民総所得』であると考えています。なぜなら、私の成長戦略の目指すところが、意欲のある人たちに仕事をつくり、頑張って働く人たちの手取りを増やすことに、ほかならないからです。つまりは、『家計が潤う』こと。その一点です」と述べた。

しかし、言うまでもなく国民総所得は家計の所得そのものではない。

GNIとGDPの差にあたる海外からの純受け取りは2011年度(確報の最新値)で14.8兆円だが、その大部分を占めるのが財産所得の14.6兆円である。海外からの財産所得(純)は国内の部門別の財産所得(純)の合計に等しくなる。

ここで、部門別の財産所得(純)の推移を見てみる。

家計部門は超低金利の長期化によって利子所得が大きく減少したことから、ピーク時(1991年度)の38.0兆円から2011年度には12.1兆円となり、この20年間で25.8兆円減少している。

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