国民総所得が増えれば、家計所得は増える? 景気・経済観測(日本)

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このように、国民総所得はあくまでも国(居住者)全体の所得を表すもので、家計の所得を把握するうえでは、必ずしも適切な指標とは言えない。家計が潤っているかどうかを判断するためには、国民総所得がどのように分配されているかを見ることが重要だ。

実質GNIは円安による交易利得減少で低く

GNIを実質で見る場合には「交易利得」の概念を加えて考える必要がある。かつて(68SNA)の実質GNPでは輸出入の実質的な数量差による純輸出は含まれるものの、輸出入価格(デフレーター)の差によって生じる所得の実質額(=交易利得)はカウントされていなかった。だが、93SNAでは、所得を実質化する際に、交易条件の変化に伴う実質所得(購買力)の変化をとらえる「交易利得」を加えることで新たな調整を行い、国民が受け取った実質的な所得をより的確に表すこととなった。「実質GNI=実質GDP+海外からの所得の純受け取り(実質)+交易利得」となる。

実質GDPと実質GNIの推移を見てみると、2010年度までは実質GNIが実質GDPを上回っていたが、2011年度からはこの関係が逆転している(注:実質値はあくまでも2005年を基準としたものであり、実額の水準そのものには意味がない。たとえば、基準年の交易利得は理論的にはゼロとなる)。両者の成長率を比較すると、名目とは逆にほぼ一貫して実質GNI成長率のほうが低く、過去18年間平均の乖離幅は0.1%である(図)。

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