フランスはどうやって少子化を克服したのか

なるほど、これなら出生率があがるわけだ

上の子が小学校にあがる段階になってはじめて、共働きの妻にのしかかっている負担の大きさに私は気づいた。二人の育児、そして介護もある。今、私は会社の育児介護制度を活用して勤務時間帯を変更し、できるだけ家族に寄り添う時間を持つようにしている。本書の表現を借りれば、父親になるのが遅すぎたのかもしれない。これから、子供たちが手を離れるまで、残された時間を大切にしていきたいと思っている。

大切なものを育んでいくために必要な社会的コスト

『フランスはどう少子化を克服したか』 (書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします) 

2012年には約7割がこの父親休暇を取得するほど社会に浸透してきたという。これだけ浸透したのは、雇用主が拒むことはできない制度だからだろう。しかし、経済的な面やそれをバックアップする職場環境がなければ、社会に根づくのは難しい。日本でも育児や介護に関する制度は整いつつあるが、風土が追いついてこない状況があるのはご存知のとおりである。その点について、フランスの状況を本書『フランスはどう少子化を克服したか』から引用しつつ説明していきたい。

“3日間の出産有休は雇用主負担ですが、11日連続の「子供の受け入れ及び父親休暇」は、給与明細上では無給休暇扱い。が、それが実質的に有給休暇になるように、国の社会保険から休暇中の所得分が支給される仕組みになっています。”

つまり、男を父親にするために、雇用主が3日間そして国が11日間、給与を負担していることになる。また、休暇中に業務に与える影響も少なからずあるに違いない。しかし、多くの人が、それ以上に大切なものを育んでいくために必要な社会的コストとして認識しているということなのだろう。この共通認識は、次のような本書の記述にもあらわれている。

“可能な範囲のヒアリングを試みました。すると、職種・業種問わず全員から、同じ答えが返って来たのです。

「そりゃ、人生で一番大切なことだから!」

今の雇用現場で「子供の出産で父親が休むこと」はほぼ、絶対不可侵の神聖な休暇と捉えられているそうです。”

命を育むことが最優先──「5つの新発想」は全てこのベクトルに向かっている。本書を読んでそう感じた。それによって風土が変わり、制度を活用しやすくなったのではないか。少子化、高齢化、長時間労働、女性活用……働き方革命が叫ばれ、日本でも制度は整いつつある。しかし、それだけでは足りない。多くの人が、胸を張って制度を利用できる風土になったとき、はじめて機能しているといえるのではないだろうか。育児介護制度を活用した私のはじめの一歩が、やがて堂々とした広い道になることを願ってやまない。

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