政府は6月12日に決定した成長戦略の中で、投資減税で法人負担を軽減するとした。法人税減税を望む声は、経営者の中でも圧倒的に強い。
しかし、以下で論じるように、法人税の負担やそれが経済活動に与える影響については、誤解がきわめて多い。法人税率の引き下げが企業活動を活性化するという議論は誤りであるし、日本の現状を考えると、投資減税を行っても設備投資が増加するとは考えられない。
この問題を考える際に、一般的な法人税率引き下げと、投資のための特別な減税(投資税額控除など)を区別して考える必要がある。
まず、法人税率について。法人課税は、地方税の一部を除いて利益にかかる税である。したがって、企業にとってのコストにはならない。だから、税率の変更は、法人の行動に影響を与えない。「法人税率が高いから、日本企業の国際競争力が落ちる」という議論がしばしばなされるが、これは誤りだ。
公的負担のうち法人のコストとなるのは、社会保険料負担である。これは、利益の有無に関係なく課される。額的にも、いまや法人税負担より大きい。日本企業の国際競争力を問題にするのであれば、社会保険料負担を問題にすべきだ。消費税のような間接税も、転嫁できずに事業者の負担となれば、コストとなる(もっとも、法人税を課税されている場合には、これらは控除されるので、全額がコストになるわけではない)。
法人課税が影響を与えるのは、法人形態での事業と、それ以外の形態の事業(法人税が課税されない経済活動)の選択だ。例えば、個人事業形態との選択だ。
なお、法人税は、所得分配には影響を与える。ただし、法人税は、資産所得に対する所得税の前払いなので、所得税における配当・譲渡益課税との関係を考えずには議論できない。公平性の観点からすれば、いまの日本で必要なのは、円安によって利益を増大させた企業への特別法人税であろう。これは、企業努力によらずして実現した利益であるからだ。
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