「生活保護バッシング」が的外れな根本理由 食費1日260円で生活する34歳女性の叫び

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私に限らず、この日本で暮らしているかぎり、生活は苦しい。その中で我慢している人と我慢できずに生活保護を受給している人がいる。だから私と同じように我慢していればいいんだ……そんな恨み節のようなものが、批判される方にはあるのかもしれません」

生活保護受給者とひとくくりにして、批判をすることや攻撃することに意味はあるだろうか。生活保護受給者への怒りや批判という形で、現状へのつらさを吐露しても、問題は根本的には改善しないように、わたしには思える。言うまでもなく、加藤さんは批判を受ければ受けるほど、自立が遠のくとさえ話しているのである。

加藤さんの事例では、幼少期からの孤独、常にストレスにさらされてきた生活環境が生活保護受給や自立を阻害する要因になっていることがわかる。決して本人の怠惰ではない。加藤さんのような環境に置かれたら、大抵の人はつらいであろう。病気を発症するのは彼女だけではないかもしれない。加藤さんと同じ境遇を自身に置き換えてありありと想像することで、彼女の心情になるべく想いを馳せていただきたい。

最後に加藤さんが、過去の自分を冷静に振り返る。

「私は人に対する恐怖心があり、成功した経験や褒められた経験も少ないので、自己肯定感がありません。実家に引きこもって以来、働きたいのに働けないストレスをさらに増やし、精神疾患の悪化も招いて、ますます働けなくなるという負の連鎖が始まったのです」

最近は生活保護を受給したことで、ようやく負の連鎖が止まり、自分の将来を考えられるようになったという。これからは人とかかわる力をさらに身につけていきたいそうだ。

厚生労働省を相手に

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加藤さんは仲間に支えられ、現在、弁護士とともに、首都圏の裁判所でいわゆる生活保護裁判を闘っている。相手は厚生労働省だ。2013年から3回にわたり、生活保護における生活扶助基準が段階的に引き下げられている。2015年7月からは生活保護における住宅扶助基準も引き下げられた。さらに冬季に暖房費などの名目で支給される「冬季加算」も減額された。北海道や東北地方など、寒冷地の生活保護受給世帯は心細い思いをしていることだろう。

生活保護に対するバッシングや批判をきっかけにした、このような引き下げはもう止めてもらいたいと彼女は主張している。自分が将来に希望を見いだせた生活保護制度を「劣化」させることを防ぎたいというのだ。

「私たち若い人の中にも、十分な生活保護を必要としている人たちが沢山いるんです」

生活保護基準の引き下げをきっかけに、政府は年金や介護、医療など幅広く社会保障費を削減する傾向にある。加藤さんは、「同じような人を救うためには、生活保護受給当事者が立ち上がるしかない。おかしいと声を上げるのは大変勇気がいりますが、最後まで弁護士や仲間の皆さんと頑張ります」と決意している。

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