「生活保護バッシング」が的外れな根本理由 食費1日260円で生活する34歳女性の叫び

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「『親がいると生活保護は受けられない』と、福祉課職員に言われました。親なんていても助けてくれないし、病気を抱えてどうやって生きていったらいいのか悩みました」

初めてひとりで生活保護の相談に福祉課へ赴いた際、職員から威圧的な対応をされたという印象を持った。そして、生活保護について、「親がいると生活保護は受けられない」という誤った情報を伝えられ、それでも生活が苦しいのであきらめきれずに、再度相談に行き、ようやく生活保護を受給できた。

社会福祉の現状

2回目に福祉課へ行った際は知り合いの民生委員に相談し、保護申請に付き添ってもらったそうである。申請手続き中、不安を覚えたせいで過呼吸も起こしてしまったが、何とか暮らしを立て直す第一歩を踏み出せた。このような若者に対して、生活保護の窓口が冷遇することはいくつも指摘されている。決して珍しい話ではない。

2016年1月15日のインターネット版・読売新聞には、社会福祉制度に詳しく、筆者とも親しい原昌平記者が、若者などの生活困窮者に対して、福祉事務所があまりにも不適切な対応をするため、以下の意見を含む記事を配信した。

「生活に困って生活保護を利用したいと思った場合、原則として福祉事務所に保護を申請する必要があります。そのとき大事なのは、一定の知識と胆力のある人を除いて、いきなり、ひとりで福祉事務所の窓口へ行かないほうがよいということです。親身に手助けしてくれる窓口担当者もいるのですが、一方で、保護を増やさないのが仕事のように勘違いしている職員もいて、間違った説明をされたり、申請できないまま相談だけで帰されたりすることがあるからです。きつい質問や言葉によって、精神的なダメージを受ける場合もあります。支援団体や法律家の協力を得るか、他の福祉関係の機関にまず相談するなどして、なるべく、だれかに同行してもらいましょう」(原記者の「医療・福祉のツボ」貧困と生活保護〔21〕「生活保護の申請は支援者と一緒に行こう」)

長年、さまざまな生活困窮者の取材活動を通じて現場に詳しい記者もそう報道せざるを得ない社会福祉の現状だ。

当然、加藤さんのような若者が生活保護を受けることに対して、厳しい意見や批判がある。たとえば、病気を持っているにしても本当に働けないのかというものだ。

「就労したいというあせりや不安があり、そのために病状が悪化したこともあった。自分なりのこれまでの努力や頑張りを評価してほしい。何とかなるのであればもうとっくに何とかなっている」と彼女は訴える。

実際のところ、生活保護についてインターネットで検索すると、受給者への心ない言葉が平然と飛び交っている。加藤さんもそのような書き込みを見ることがある。

「批判の中には、『生活保護受給者はカップラーメンを食べるのもぜいたくである。カップラーメンは高い。なぜ節約を考えるなら、何食も入っている安い袋麺にしないのか』というものもあります。心が痛みました。ネットの書き込みに恐怖して、病気が悪化してしまうこともある。生活保護を受けたくて受けているわけではなく、早く自立したいと思っているので、なおさらあせってしまう。個別の事情に配慮してほしいんです。

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