極限的に忙しい仕事人のリアル「断捨離」術 殿堂入りアナリストはこう考えてきた

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キーワードは「持たない」生き方です。私は大切な仕事をしっかりとこなしながら「人生のしあわせ」を極大化するために、「持たない」こと、そして、そのために「捨てる」技術を身につけました。

基本理念=荷物は軽いほうがいい

概念的な話をすれば、持たなければ失うものがないですし、持ち物は軽いほうが機動的に動けます。これは、物理的な持ち物ばかりでなく、手にしている情報量や背負っているタスクなど目に見えないものにも共通することです。

拙著でも書きましたが、私のメールボックスは常に空っぽですし、本棚もガラガラです。メールは即レスで、時間を要するものは他のフォルダに保管しておきます。資料も紙で残さず、必要なものだけパソコン上に保管します。

筆者が「持たない」ために重視してきたポイントは、以下の4つです。

●確率論的な情報処理 ⇒ 「取りこぼし」を許容する
●責任の極小化 ⇒「ボール」はすぐに手放す
●フォルダーのフル活用 ⇒ 情報の「ピラミッド」をつくる
●しあわせの定点観測 ⇒ 時間の配分と割り当てを見直す

【確率論的な情報処理 ⇒ 「取りこぼし」を許容する】

筆者が長年、アナリストとして接してきた銀行業界を例にとりましょう。銀行は信用が第一です。ですから、事務ミスなど許されてはいけない、というのが古くから日本の銀行で行われてきた行政のスタンスでした。このため、銀行はミスの撲滅のため、何重ものチェック体制を敷くことで大きなコスト負担をしながら対応してきました。

一方、アメリカの銀行ではそうとは考えられていないようでした。ミスは一定確率で発生するものという考え方をしており、ミスが引き起こす損害に対して備えをしておく、つまり引当金を積んでおくというスタイルなのです。

情報への対応も同様です。人間が入手可能な情報量には限りがあります。どんなに優秀でも、アナリストが投資家の持っている情報量をすべてカバーすることは、到底できません。ですから、「見切りをつける」ことが大切です。

見切るための手段は、「ソースの特定」と「斜め読み」です。アナリストという仕事柄、日々大量の情報に接してきましたが、以下のようなやり方で筆者は「断捨離」を行ってきました。

まず、有用な情報がコンスタントに得られるメディアがどれか、あたりをつけて見るようにします。普段読まない雑誌なども、念のため広告やホームページの見出しをチェックします。新聞は見出しを中心に数分で俯瞰してしまい、必要な部分をさらにスキミング(要点をつかみ取るように)します。こうすれば、ネットなどを介して複数紙を10~20分で読みこなすことができ、しかもムダな情報を削ぎ落として必要な情報だけに「筋肉質化」することができます。いつも忙しければ、これで十分です。雑誌や電子媒体も同様です。関連性の高い記事をじっくり読む時間を捻出するためには、短時間で俯瞰することが大切です。

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