しかし、私が助言をいただいている保険数理の専門家たちは、異口同音に「預金との比較はダメ」と言います。保険では短くても数年間、商品によっては満期まで元本割れ期間が続くこともあるためです。リスクが異なる点を無視した比較は間違いなのです。
払い込む保険料の総額と老後などに払い戻しされる返戻金の額を単純比較するのも「やってはいけないこと」「すごくスジが悪い比較」と断言します。
中途解約時に損が出ること、貨幣価値が変わるかもしれないことなどを考慮して、将来受け取るおカネの価値は額面より必ず(!)低く評価しなければならないからです。
「今日満期が来る100万円の受け取りを30年後にすると110万円になる」という話がある場合、「30年待つほうが10万円も得」と、額面どおり判断する人はいないだろう、と想像してみたらいいでしょう。
「将来の100%は常に100%未満」であることを伝えない広告やセールストークは、真に受けてはいけません。
「長期的には…」という説明が、そもそも苦しい
3 「外貨建てだから高金利」と伝える
円建ての保険が低金利であることを語り「外貨建てなら高金利なので、効率的におカネが増やせます」といった案内も真に受けてはいけません。
ある証券会社で外国債券による運用にかかわってきた人は、「高金利通貨で運用しても、運用益は為替の変動で簡単に吹っ飛んでしまう」と言います。
複数の保険会社で保険会社のリスク管理などにかかわってきた人も「外貨建て保険は金利が高いといっても“名目”金利に過ぎません。為替レートは、各国の物価や貨幣価値から見た“実質”金利の差に応じた動きをします。長期ならなおさらでしょう。ドルでおカネを持っても円でおカネを持っても、得にも損にもならないように決まるのが為替レートです」と言います。
外貨建て保険の販売に注力している保険会社の人は、「長期的には有力な資産形成手段」などと言いますが、私は、そもそも「長期的には……」という説明が苦しいと思っています。
貯蓄商品である以上、将来、払い戻しされるおカネの額が、保険料総額を上回り、収支がプラスになるのは当然です。そうでなければ、誰も契約しないでしょう。
しかし、そのプラスが長期的に達成されるのは、単に「おカネが増えにくい仕組み」だからだと思います。契約当初は保険料の大半が代理店手数料などに費消され、運用に回らないために、初期のマイナスを挽回するのに長い時間がかかってしまうのです。
一般に、保険商品の手数料は金融商品の中でも高く、外貨建て保険の手数料は円建て保険より高めです。言うまでもなく、代理店手数料など、他人の口座に入ってしまったおカネは、2度と加入者のもとには戻ってきません。
消費者は長期的な収支を云々する前に、「契約当初の元本割れが大きい商品ほど避けたほうが良い」と見るべきでしょう。
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