サイバー「大幅減益予想」はアテにならない? 今期、巨額投資に踏み込む理由

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AbemaTVは、スマートフォンやパソコン、タブレット端末向けに約30チャンネルで放送するサービス。テレビのように番組の間に流れるCMの広告収入で運営するため、ユーザーは無料で視聴できる。月額960円を支払えば、好きな時間帯に好きな番組を見るオンデマンド再生も利用できる。

AbemaTVはスタジオこそ通常のカメラだが、中継ではiPhoneを利用するなど、コストを抑えつつも、スタッフが機動的に動ける工夫をしている(撮影:今井康一)

今年4月の開局以来、サービス利用者数は右肩上がりに拡大。足元でアプリのダウンロード数は1000万、週間の視聴者数が300万に達している。

藤田社長は「1000万WAU(週間視聴者数)を達成したところからが勝負。今すぐ黒字化しようと思えばできなくはないが、そんなものを目指すつもりはさらさらない」と語る。あくまでマスメディアとしての規模拡大が先決との考えで、今期は前期の倍にあたる200億円を同事業に投じる。

200億円のうち、7割はコンテンツ面の投資に充てる。チャンネル数自体は現在の30前後から増やさず、自社制作コンテンツ、購入する外部コンテンツの両面で内容のブラッシュアップを図る。特に毎日の視聴習慣につながりやすいニュース番組を強化するほか、女性視聴者比率(現在は35%)を引き上げていくためのドラマ、映画、また、サッカーや将棋など趣味特化型の番組も拡充する考えだ。

今期も「終わってみれば大幅増益」にできるか?

WOWOWやスカパーJSATは年間数百億円規模の制作コストを持っており、民放はそれ以上だ。「うちはまだ200億円。コンテンツに十分おカネをかけていると言い難い」と藤田社長は語る。一方で、ユーザーを増やしている今の段階では「サッカー日本代表の試合のような、一発逆転の高額コンテンツを買ってくることもしない」(藤田社長)。200億円という額とその使い道については「身の丈に合った投資」と位置づける。

コンテンツの充実と両輪で進めているのが「使いやすさ」のブラッシュアップだ。テレビに接続するスティック型端末の「Chromecast(グーグル)」や「Amazon FireTV」との取り組みなど、AbemaTVの番組をテレビでも見られる環境を整備していく。さらにスマホでは、より気軽に開けるタテ型動画の検討や、別アプリと併用できるバックグラウンド再生などの対応を進め、視聴者のストレス軽減に務める。

このように費用先行の業績予想になってはいるものの、今期もゲーム事業の滑り出しは快調だ。「ボラティリティ(流動性)を考慮して」営業利益を前期より少なく見積もっている会社予想には、上振れ余地が十分にある。広告事業でもさらなる飛躍が期待でき、前期の決算同様、ふたを開けてみれば大幅増益、という結果もありうる。

とはいえ、中長期で同社の行方を左右する最大要因は、やはりAbemaTVだろう。「夏休みなども含め、お休みの日、視聴者が家にいるときのほうが大きく伸びる」(藤田社長)という特性上、次の焦点は年末年始。そこに向け、広告宣伝や番組編成に力を入れていくという。どこまでユーザーの心をつかめるか。大胆な投資の成果が問われる。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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