個性を認められたくば、発信方法は右に倣え 経済学、そして経済学者に「国境」はあるのか?

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国境というものの「積極的な」意味

以上、「経済学者には『国境』はあるが、経済学には『国境』がない」ということを論じてきました。「科学者には国境はあるが、科学には国境はない」と形式は同じですが、その中身の意味合いは本家とは異なります。

まず、経済学の対象には、「国境」はあるが、それは、分析を下支えする分析手法の普遍性に対する信頼から決まる「程度問題」であること(他方、自然科学の対象に対しては、「国境」が関係しないことは無謬性を持ってそう考えられる)。

そして、「経済学者に『国境』があること」には、自然科学と違って、積極的な意味があるのではないかということを指摘しました。

もっとも、自然科学であったとしても、科学者の「国境」の違いが、積極的な意味を持ちうるのかもしれません。私はよく知りませんが、「湯川秀樹の『中間子の理論』は東洋的な云々」といった言説です。

そう考えると、自然科学と社会・人文科学の距離はそれほどないのかもしれません。

 

著者撮影:鴨川のカモの親子。次の更新は、7月半ばを予定しています

 

 

安達 貴教 経済学者

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あだち たかのり / Takanori Adachi

京都大学経営管理大学院准教授。Ph.D.(米ペンシルヴェニア大学)。著書『データとモデルの実践ミクロ経済学』(慶應義塾大学出版会)が近刊の予定。

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