日本人は「難民問題」とどう向き合うべきか

難民を受け入れる以外の支援策は?

難民がもたらす治安上の課題、さらには社会構造の変容という長期的な問題は、真剣に受け止められなければならない。難民受け入れの推進派はとかく人道主義を唱えがちだが、「善意の上限」というものがある。「難民中心主義」では多くの問題を見落としてしまう。難民の流入と向き合う社会や国家の状況、そして何よりも不安を抱く一般市民の感情に思いを馳せる必要がある。

EUの問題の根は、理想主義にあった

墓田 桂(はかた けい)/1970年生まれ。フランス国立ナンシー第二大学にて公法学博士号(Docteur en Droit public)取得。外務省勤務を経て、2005年より成蹊大学にて教鞭を執り、2015年から現職。フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学客員研究員、英オックスフォード大学客員研究員、法務省難民審査参与員などを歴任(撮影:風間仁一郎)

──善意の上限?

欧州連合(EU)の最大の問題は、理想主義をあまりにも追求しすぎたことにある。社会や国家が示せる善意にはどうしても限界、つまり上限が生まれる。ドイツのメルケル首相自身、「庇護権に上限はない」として難民を受け入れ続け、限界を感じてからは「時計の針を戻したい」と悔やんでいる。上限を早めに意識すべきだった。

クルド人幼児溺死の衝撃は大きく、それゆえ人々は人道主義の理想に向かった。しかし、大量難民の流入はいわば有事。有事には有事の対応が必要なのだ。人道主義があまりにも過剰だったので、EUの苦悩は深まったといえよう。

特にフランスやドイツなどの国々は、移民労働者として多くのイスラム教徒を招き入れた。彼らが現地社会に根を下ろし、その2世世代が育ってきている。しかし、2世世代の中には社会に居場所を見いだすことができず、自分たちだけで集まろうとする動きもある。こうしてメインストリームの社会から隔絶された別の社会が生まれている。その中から急進的な思想を持ち、暴力的な手段に訴える者が後を絶たない。

──では、日本は難民問題とどう向き合うべきですか。

私はこの本の中で「難民の地位に関する条約」(難民条約)からの脱退も視野に入れるべきと書いている。現実的には難しいだろうが、一つの選択肢として検討に値する。

日本の難民認定制度における濫用の事例を見るにつけ、この条約に日本が加入し続けることに積極的な意義を見いだしづらくなった。そもそも難民を受け入れることが国益につながるとは考えづらい現実がある。実際、難民条約が法務行政にもたらしている負担は大きい。

安全保障という観点からも難民条約が21世紀初頭の現実に合致していると見るのは困難だ。特に日本の場合、北朝鮮の崩壊というシナリオを想定するならば、難民条約の加入は多くの悩ましい問題を生じさせかねない。

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