日本人は「難民問題」とどう向き合うべきか 難民を受け入れる以外の支援策は?

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日本における昨年の難民申請者は7586人、うち認定されたのは27人しかいない(写真:Pascal Rossignol/ロイター)

欧州で難民・移民の流入が国家、社会を揺るがす問題となっている。欧州の「苦悩」から日本は何を学ぶのか。『難民問題 イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題』を書いた成蹊大学文学部国際文化学科教授の墓田桂氏に聞いた。

日本の難民受け入れ問題は

──日本は難民問題、特に受け入れに「慎重であるべき」なのですね。

2015年3月までの2年間、法務省で難民審査参与員を務めた経験からだ。

──日本における昨年の難民申請者は7586人、うち認定されたのは27人と少ない。

正確にはそのほかに「人道配慮」を得た人も79人いる。この難民認定の数字だけを見れば、確かに認定率は低い。ただ、実際には難民性の低い人たちが申請を行っているという現実がある。審査での彼らのバイタリティには圧倒されたが、任期終了が間近の技能実習生や退去強制を命じられた人が、在留資格の延長を目的として難民申請をするケースが多々あった。

この数字から日本は難民に対して閉鎖的といわれることが多いが、私は国が閉鎖的であることにも合理性があると考える。入国管理がしっかりとなされていることによって、日本という国は安心を得ている。「壁」が強固に機能することによって日本の生態圏が守られ、安心して外の世界と交流できる。壁は「住み分け」を可能にする重要な機能を担っているのだ。

──欧州では、昨年9月にクルド人幼児の溺死映像が報道されて以降、あらためて難民受け入れの機運が高まりました。

しかしその後、残念ながらテロや犯罪事件に覆われているのが欧州の実情だ。過去にも左翼の過激派や分離独立を目指す活動家によるテロ事件は存在したとはいえ、イスラム(原理主義)を標榜するテロが頻発し、深刻な社会不安を巻き起こしている現状に至っている。

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