ノーベル賞大隅氏が説く、「役に立つ」の弊害 「面白いから研究する」という人が減っている
――オートファジーの機構解明も、酵母の研究という地道なところから始まっています。
私も液胞の研究を始めたときには、周囲から変なものをやっていると思われていた。科学研究にはそういう人がいていい。ノーベル賞も、ここ数年は取れる人もいるかもしれないが、10年後には取れる人がいなくなるのではないか。
「サイエンスの危機といってもよい状況だ」
面白いから研究をやる、リスキーなことでも取り組む、という人が減って、いかに早く一流誌に論文が載るかが問われ、そうでないと学振(学術振興費、優秀な大学院生に研究費と生活費を支給する仕組み)などのサポートを得られない。こういう仕組みのもとでは小器用な人ばかりが成功者になる。目立たない分野だと科研費(文科省が配分する研究費、新規の採択率は2015年度26.5%)に応募してもなかなか取れない。これはサイエンスの危機と言ってもいい状況だ。
民間企業でも、自社で開発するより欧米の会社を買うことが増えている。カネで解決する方法では研究者が育たず、レベルが下がっていく一方になってしまう。とても危険な状態だ。基礎研究には20年くらいの時間が必要で、せめて10年かけてもかまわないという余裕のある企業トップがいてくれれば、と思うが、難しい。このままでは日本の科学研究が空洞化してしまうのではないかと大変心配している。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら