おじいちゃんの社長さんから「この人と見合いをしてほしい」と言われたり、コンペの後などこちらの立場が弱いのにつけ込んで夜に呼び出しの電話をしてくるようなおじさま担当者がいたり。打ち上げでチームで食事をご一緒した後に、カラオケボックスに行こうとやたらとふたりきりになりたがる人がいたり……。幸いにも、取引をちらつかせて「あわよくば」……といった出来事には、ほとんど遭遇しませんでしたが、「女性として見られている」と思いながら仕事をするのは、やはり苦痛でした。
自分なりには一生懸命対応してきたつもりだったけれど、それなりに悩んで、上席者に相談したら、「お前に隙があるからそんな目に遭うんだよ」と言われてしまったことがあります。死ぬほど屈辱な思いがこみ上げ、辞めてやろうとさえ思ったくらいでした。
壁との向き合い方を叩き込んでくれた女性上司
でも直属の女性上司に半泣きで訴えると、「馬鹿ねぇ。あなたが魅力的な人間だからこんな目に遭うんじゃないの。オトコどもはひがんでいるだけよ」と笑われたのです。けれどもすぐ、いくつかのお客様のところに同行してくれ、様子を観察もしたうえで、「ちゃんと見てますからね」的なガンも飛ばしてくれました。
帰り道に1社1社、「大丈夫。あなたはちゃんと対応できてるからこれ以上のことはないわよ」などと観察した実感も共有してくれて、最後に「いろいろなお客様がいて、対応が難しいお客様は必ずいるもの。どんなお客様とも安定して仕事ができる、任せられるということはすごい価値なのよ。あなたは今それに挑戦しているのであって、オトコたちが言うような下品なレベルで仕事しているのではないことを自覚しなさい」と真面目な顔をして告げられました。
私も8年間営業担当をしたのですが、その中で「女性が営業担当だなんて馬鹿にしているのか?」と言われたことも、「女性営業だから取引するとでも思っているのか」などと言われたこともあります。仕事の能力とはまた別に、性差は歴然と存在していました。「女性として好意を持たれる」とは別の次元でも、「女性だから」と考えられることはずっと続いたのです。
ただ、「女性だから損してる」とはほとんど思ってこなかったと思います。女性だからこそ出合う現実が厳然とそこにあるのであれば、それを乗り越えていくことで自分の価値はあがるのだと思ってきました。今思うと、女性上司が同じ女性として、壁との向き合い方を叩き込んでくれたからだろうと思います。
お客様から女性として見られている、ということが嫌だと思うあなたの気持ち、よくわかるつもりです。上司や同僚の発言がいかに「イケてないか」ということも、それにがっかりしてしまうことも、ものすごく共感します。
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