国内”勝ち組”の日立、次は世界に挑む 世界のインフラ市場を目指すが、そのハードルは高い

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海外でのサービスを強化

収益力アップのカギと位置づけるのが海外での成長。海外事業を拡大することで、売上高に占める海外比率41%(12年度)を15年度に50%へ引き上げる。この数字、70%近いソニー、55%の東芝と比べてそもそも低い。だが、ソニーはテレビ、東芝はNANDフラッシュメモリといった単品商売で多くを稼いでいる。対して、電力や情報・通信システムといったインフラ事業が中心の日立にとって、50%は決して簡単な目標ではない。

というのも、一国の基盤となるようなインフラビジネスを獲得するには、製品の性能やコスト競争力が優れていることはもちろん、プロジェクト全体の提案力や資金調達力、人脈形成など総合力が必要とされる。しかも、最近では機器を納めて終わり、とはならない。保守や運用などサービスまで担うため、財務の安定性も要求される。

こうした難関を乗り越えて、動き出したプロジェクトもある。昨年7月に正式受注した英国の都市間高速鉄道事業(IEP)の総事業規模は5500億円。日立は596両の車両を販売するだけでなく、日立が主導する特別目的会社が車両を保有し、運行事業者に約30年リースする。さらに日立が保守も請け負う。

昨年11月には、英原発会社のホライズン社を850億円で買収した。入札を実施する側の原発会社を自ら買収することで、海外初となる原子力発電所の建設を力業で手に入れた。電力事業そのものはパートナー企業を募って任せる方針だが、日立が原発建設から運営まで関与することになる。

いずれにせよ、サービス事業の拡大には、現地の事情に精通した人材が欠かせない。このため中計では海外人員を12年度末の11万8000人から15万人に増やす。海外人員の増加にとどまらず、人材を活用することを狙い、3月には「グローバル人財データベース」を完成させている。

これはグループ社員32万人のうち、課長クラス以上の管理職を対象に統一した尺度でグレーディングを行ったうえで、仕事の経歴や語学力などさまざまな情報が盛り込まれている。これまで経営陣は、自分が知っている範囲で幹部を選ぶ傾向があったが、条件に合った人材を検索することが可能。本社の本部長が海外子会社の社長になるなど、グループや役職を横断した柔軟な異動もやりやすくなる。

このデータベースを本格運用することで、国内子会社はもとより、海外の現地従業員を経営幹部に抜擢するケースも出てくるはずだ。グローバル企業にふさわしく、人材の多様化が進むことになる。

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