歴史修正主義のコストは20兆円を超える?
さて、本日もぶつぶつ申し上げてしまったが、いったい歴史認識をめぐる政治家の発言とそれに対するデモで、いくらの経済損失が発生しているのだろうか。たまには金融マンらしいことも言わんかいということで、歴史認識をめぐる問題発言の経済コストをディスカウント・キャッシュフローモデルで計算してみた(この手の話題がつまらない方は、ぜひ飛ばして最終ページにお進み願いたい)。
ジェトロ統計によれば2012年の日中貿易総額は3336億ドルで、前年に比べ3.3%減少し、これは過去10年、リーマンショック時を除き2ケタから40%に迫る年間成長を見せてきたトレンドと比べると、極めて大きな落ち込みである。中でも輸出の落ち込みは10%に上った(最終数値は1447億ドル)が、輸入は逆に3%増えており、中国が日本から買うよりも、日本が中国から買わなければならない状態であるのが見て取れる。
なお、領土問題をめぐり反日の機運が高まった9~12月期の対中輸出の落ち込みは、63%に上った(ちなみに外務省の統計によると日韓貿易総額は同年1032億ドルで、中でも韓国への貿易黒字は極めて大きいが、話を単純化するために中国に絞る)。
仮に3000億ドルの貿易規模が、歴史認識をめぐる反日感情によって、(控えめに言って)5%程度、4年に1回低下すると、いくらの経済損失になるだろう。
割引率を10%と仮定して(毎年のリスクプレミアムは異なるし、国のデットとエクイティの比率も変わるなどの細かい話は割愛。なお貿易黒字ではなく貿易総額であることに留意)、貿易総額の当面の成長率を8%と仮定すると、貿易総額に与える影響の現在価値は実に2000億ドル(実に20兆円!)を超える。しかもこれは控えめな貿易成長率に基づいており、さらに対中貿易に限った話である。
至極控えめに見積もっても現在価値で最低20兆円のダメージだ。国民のためになるプラスの政策は何もできないのに、国民の利益を毀損することだけは一丁前以上にできるのだから、困ったものである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら