なお誤解のないように申し上げておくと、私は韓国や中国のデモのすべてを“反日デモ”という言葉でくくるのには賛成しない。たとえば毎週水曜日に従軍慰安婦の被害者の方々が計1000回にわたって大使館前で謝罪を求めておられる“水曜日デモ”は、これは正当な権利と思いを主張した本当のデモだと考えている。
彼女たちは10代のときに自身が受けた壮絶な人権蹂躙に対し、過去の謝罪を覆す政治家の言動に声を上げているのであり、慰安婦被害者の方が述べられているよう、日本全体を非難しているわけではない。そして安倍氏や石原氏が繰り返し彼女たちを売春婦扱いする発言を繰り返してきたことに対し、日本国内からも大きな非難が沸き起こっている。
これは、“一部の目立つ愚か者が、国を代表しない極端な見識で両国関係を毀損している”という意味で、中央日報の愚かな一コラムニストが原爆を神からの懲罰と不適切に比喩し、韓国国内からも猛批判を受けていることに共通する。
安倍氏の長年の活動の“成果”
一部で繰り返された下劣なヘイトスピーチや、橋下氏、高市早苗氏の歴史認識をめぐる発言が再三物議を醸しているが、この劇的な空気の変化は、安倍氏の大きな“成果”と言えるだろう。
安倍氏は1990年代から非常に熱心に村山談話や河野談話を否定する運動を続けてきており、歴史修正主義で物議を醸した歴史修正主義団体“つくる会”の歴史教科書の熱烈な支持者でもあった。また自身が首相になった2007年には早速、村山談話否定の布石である“慰安婦強制連行の証拠はなかった”という内容の閣議決定を、世論の関心がまったくないままに行った。このことが、日韓関係にブローのように効いてきている。
この歴史認識をめぐる安倍氏の本心は、安倍氏とともに長年、村山談話の否定と修正主義的な歴史教科書運動を進めてきた下村博文氏が文部科学大臣を担っている人事からも明らかだ。
ネトウヨとされる人々の中での安倍氏に対する圧倒的に高い支持や、橋下氏が発言の根拠として“安倍内閣による閣議決定”を使っている点からして、一連の流れの背景にある安倍氏の責任は極めて大きい。
残念ながら歴史認識や“学者による調査”などは、しょせん時の政権にいくらでも歪められるものだ。国連による調査とか、村山談話や河野談話の時の識者による調査とか、小泉政権の時からの共同調査とか、時の政権次第でいくらでも無視できるのは証明済である。
根本的な解決ステップとしては“民間基金”といった、時の政権次第でいくらでも歴史修正ができる曖昧な解決策ではなく、国会の決議とドイツのような法的な対応を含む社会的なインプリメンテーションをどうするかにかかっているだろう。そして最も迷惑で高くつくのが、謝罪してはそれを否定して、という非生産的なサイクルを延々と続けることである。
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