7年の豊作から7年の飢饉へ、経済も同じ? 旧約聖書と経済学者が異口同音に示唆する「金融危機とその回復」

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エジプト王の夢とバブルの関係

 エジプト王パロが夢を見た。

 初めの夢では、肥え太った7頭の雌牛がナイル川のほとりで葦を食べていた。後から7頭の醜い痩せ細った雌牛がやって来て、太った雌牛を食べてしまった。

 いったん目が覚めた王は再び眠りにつき、夢をみた。1本の茎に太くて実のなる7つの穂が出てきたが、痩せた7つの穂が出てきて良い穂をすべて飲みつくした。

 王は目を覚ました。
 王が夢の意味をヨセフに尋ねるとこう言った。

 エジプトに7年の大豊作があり、その後7年の飢饉が起こる。飢饉が起これば、豊作はみな忘れ去られ、エジプトの国を飢饉が滅ぼすだろう。

 

これは、旧約聖書・創世記第41章にある、エジプト王の夢の話です。

「7年の豊作が続いたあとは、7年の飢饉が訪れる」という話は、先に示したラインハート夫妻の言葉と、不思議に重なっています。そんな面白さもあって、「バランスシート調整に7年かかる」というメッセージは、キリスト教を信奉するアメリカの多くの人々の心に突き刺さったようです。

バランスシート調整というとちょっと難しい言葉に聞こえてしまうかもしれませんが、これは借金、つまり借入残高が保有資産の価値を上回るという不健全な状況を解消する動きを指します。

個人個人が不健全な状況を抜け出すには、各自がせっせと返済を進め、貯蓄に励むしかありません。しかし、国民全員がそうすれば、誰も積極的に消費をしたり、資金を借りて投資したりすることがありませんから、経済全体としての活動が縮小してしまいます。

個々の動きは正当化されても、全員がそうした行動を採ると望ましくない結果をもたらすのです。いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」といわれる現象です。

……とそんな風に、一時は先行きへの強い不安もみられたアメリカですが、バランスシート調整は着実に進展しているようです。

実際に飢饉、金融危機からの回復が7年でなされるのかどうかはわかりません。ですが、旧約聖書のエピソードと共にラインハート夫妻の言葉を頭の片隅に置いて、これからのアメリカの動向を見ていこう、そんなふうに思っていただけたら幸いです。

ちょっとしたエピソードから、アメリカ経済に対する興味を持ってもらうこと、それが、この連載の目標なのです。

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