太平洋セメント、過去最高益への道筋 震災復興工事が本格化、東北で需要活発
東北の被災地で本格化する復興工事。現地では建設関連需要が旺盛になりつつある。各種の建築・土木工事に使われるコンクリートの主要材料となるセメントも、その一つ。東北地域で4割のシェアを握る、太平洋セメントの業績が過去最高の更新に向かって、勢いを増している。
大津波で街並みが破壊された大半の地区は、がれき撤去が済んで更地の状態となっているが、政府・自治体の震災復興計画に沿った街並みの再建がいよいよスタート。道路や防波堤、住宅地といった生活インフラの工事が始まれば、被災地のど真ん中、岩手県大船渡市に主力工場がある太平洋セメントは、インフラ復興を支えるセメント資材の供給基地として大車輪の活躍が3~5年の期間にわたって求められる。
大船渡工場の早期復旧もあり前年度は大幅増益
海沿いに位置する大船渡工場は、津波で甚大な被害を受けた。が、8カ月後の11年11月には、被害が少なかった5号キルン(=写真)がセメントの生産を再開。もう1基も翌12年6月に再稼働し、震災前と同じ2系統がそろう完全復旧を果たした。
大船渡工場の立ち直りが早かったことは、前年度(2013年3月期)の太平洋セメントの業績に好影響を及ぼした。売上高は前期比2.7%増の7476億円、営業利益は同39%増の406億円へ躍進した。
今年度(14年3月期)。東北地方の太平洋沿岸にある市町村では、防波堤の再建や堤防のカサ上げ、人工地盤上での復興住宅の建設といった大型工事が急展開。全国のグループ工場では、セメント以外にも、砂や砕石といった骨材、軽量盛土、水中コンクリート、護岸ブロックといった土木資材の生産増加が見込まれており、好調だった前期以上に出荷を伸ばして、収益を大きく押し上げることが見込まれる。
太平洋セメントが5月14日に発表した今年度(14年3月期)の業績見通しは、売上高7980億円(前期比6.7%増)、営業利益480億円(同18%増)など。ただ、これは控えめだ。というのも、太平洋セメントは国内セメント販売数量を前期比0.5%増の1552万トンと想定するが、セメント協会によれば、今年4月の国内販売は363万トンと12%増。東北地方だけを取り出すと、43%増の大幅な伸びだった。足元の5月も同程度の高い伸びで推移している。
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