ストレスチェックの代行業者からは、企業からの「いくら料金がかかってもいいから、期限内に実施したい」という問い合わせが多く、駆け込み需要で営業をしなくても仕事が来るのはいいが、とても処理しきれない、という話を聞きました。
ただ、実際はおカネをかけて代行業者を利用しなくても、厚生労働省のホームページには、無料でダウンロードできるコンテンツが用意されており、従業員の名簿さえインプットすれば、集団分析まで可能なのです。研修先でこの話になると、「えっ?!そんなものがあったなんて知らなかった」という企業の担当者に頻繁に会います。情報が行き届かず、手探りの企業が多いことがうかがえます。
「何気ないやりとり」がないと仕事の相談はできない
さて、次に皆さんが受けたストレスチェックの結果を分析していきたいと思います。
公的なデータはまだ出ていませんが、様々な企業でデータを見せていただくことで浮き彫りになってきたのは、何といっても職場での人間関係の悪さです。多く見られたのは、「周囲のサポート」に関する項目で、上司のサポートの割合が少ないと感じているケース、「仕事の質や量」に関する項目で、多くの負担がかかっていると答えるケースでした。
私が普段行っているカウンセリングの現場でも、「上司に相談しにくい」「周りに手伝ってほしいと言い出せる環境にない」という相談は後を絶ちません。職場でのコミュニケーションの質の悪さや、希薄さが深刻度を増しているのです。今回、電通で起こった不幸な事件も、単純に業務の過多だけが原因とは言いにくい状況があったと推察されます。
実際に、私のクライエントの方々の中には、2週間に一度、私と話すことが唯一の「人ときちんと話す時間」だという方も少なくありません。職場での伝達はメールが中心で、直接会話をする機会はほとんどなく、一人暮らしの方も増えているからです。そのような方に、周囲ともっと相談するよう促したとしても、日常の何気ないやり取りを頻繁にしていない相手に相談を持ち掛けるのは、かなりハードルの高いことなのです。
こうした状況にあるのは、カウンセリングに来談される方々にとどまりません。先日も、ある精密機械メーカーの従業員さんが、「ペンを床に落とした音が(社内に)響き渡ります」とおっしゃっていました。それほど、事務所内には会話がなく、静かなわけです。このような環境だと、共有すれば解決できることも、1人で抱え込んでしまう状況が見て取れます。
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