アデランスを追い詰めたかつら市場の"激変"

MBOによる上場廃止の裏に「女心の変化」

矢野経済研究所によると、2014年のヘアケア市場全体の規模は4414億円。そのうち、かつら市場は1401億円と毎年わずかながらも拡大傾向にある。男性用かつらが停滞する一方、アンチエイジングやおしゃれへの関心が高い60~70代以降の女性用かつらの需要が伸びていることが理由で、アデランスや競合のアートネイチャーなども近年は、女性向けのオーダーメイド品や、簡単に装着できるウィッグやつけ毛の販売に力を入れてきた。

とりわけオーダーメイド品より安価で抵抗感が少ないウィッグなどの需要は高く、大手2社は百貨店や総合スーパー(GMS)などに専門店を増やしてきていた。アデランスでは、2016年2月期の男性用のオーダーメイド品の売上高が110億円だったのに対して、女性用はオーダーメイド品が170億円、装着するだけの既製品「フォンテーヌ」が83億円と、売上高では女性用が男性用を大きく上回っている。

女性用かつら市場で2つの変化

ところが、成長ドライバーである女性用市場で2つの変化が起きた。

一つは、オーダーメイド品市場の低迷だ。アデランスやアートネイチャーは従来、昼の情報・トーク番組など高齢の女性視聴者が多い番組でテレビCMを流し、それを見た人が電話をかけて来店する格好で新規顧客を獲得していた。が、ここ数年は電話の反響が激減。「2016年3月~8月期では、電話による反応は前年同期比30%減った」(アデランス)という。テレビ自体を見る人が減っている可能性があるが、2月~8月期では、オーダーメイド品の新規顧客は前年同期から3割近くも減っている。

もう一つ、さらに深刻なのは伸び盛りだった既製品市場でここ1~2年、突如競争が激化したことだ。通販会社や美容院などが独自にウィッグを売り始めたほか、小林製薬など異業種大手も相次ぎ参入。加えて、同業者も攻勢を強めている。

特に名古屋に拠点を置く「ユキ」は近年、東京や大阪、千葉などに出店。女性用かつらは近年、百貨店などで行う展示会が新規顧客を獲得する場となってきたが、「ユキはアデランスなどが展示会を開くそばで似たような展示会を開き、ライバルの半額でかつらを販売している」(業界関係者)という。

女性用かつらはもともと、オーダーメイド品は数十万円以上、既製品でも10万以上する高級品。が、こうした格安ウィッグの台頭によって価格破壊が起こり、既製品の潜在顧客が他社に流出。実際、2月~8月期のフォンテーヌの既存店売上高は前年同期比4.7%減少、9月も前年同月比6.3%減と一向に上向く気配がない。

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