朝井リョウさん、就活って「何者」ですか? 直木賞作家が描く、就活のリアルと本質

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――一方で、内定が決まった友達や同級生を妬む人もいる。

それは普通のことだと思います。書きたかったのは、そのような妬みや僻みといったマイナスの感情を持つこと自体を批判するわけではなくて、その感情の扱い方がおかしくなっていっている、という点ですね。それを含めて自分だ、と考えて、そのうえで自分をアップデートしていかないと、今後出会うだろうもっと大変な場面できっと耐えられなくなってしまう。

人間の総合力は誰にも測れない

朝井リョウ(あさい・りょう)/ 1989年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009 年『桐島、部活やめるってよ』で第 22 回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2013 年に『何者』で第 148 回直木三十五賞を平成生まれ初受賞、さらに男性としての最年少受賞を果たした。2014年には『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。最新作は『何者』のアナザーストーリー集でもある『何様』(新潮社) (撮影:梅谷秀司)

――朝井リョウさんはどんな就活をしたのでしょうか。

執筆の時間を確保するために、まずは暇そうな半官半民みたいなところばかり受けていました。つまり消去法で就職先を選んでいたんですよね。これがしたいから、ではなく、こうなりたくないから、という目線で会社を選んでいました。

しかし実際に、とある半官半民みたいなところから内定をいただいて、エントリーシートなどを見てもらっていた姉に報告したら、「自分で行きたい会社を選べるのは今しかない。消去法で選ばない方がいい」といわれたんです。当時、姉は行きたかった会社にいけなかったことを後悔していたので、「40年勤めるかもしれないんだよ。だから、忙しくなさそう、とかじゃなくて、その会社に勤めているってだけで気持ちが前向きになれるような、そういうポジティブな気持ちで会社を選んだ方がいい」と。そこからは「その会社にいる自分」を想像するだけで気持ちが上向きになれるような企業を受験していきました。

――ずばり聞きます。就活とは「何者」ですか?

教科のひとつです。人間の総合力は誰にも測れません。

――最後に就活生へのアドバイスをお願いします。

実は僕は面接をこっそり録音するということをやっていました。緊張するとうまくしゃべることができないのは、客観性がなくなっているから、らしいのです。だから緊張している自分を客観視できるように、「この面接をあとから聞く自分」を持ち込んでいたんです。録音機を通して客観性が生まれるわけです。緊張する場面でも、「これをあとから聞いて笑おう」という気持ちになるのでオススメですね。当然、個人で聞くことにとどめて悪用はしないというのが条件です。

録音でなくても、たとえば変なパンツを履くとか、そういうことでも客観性を持ちこむことは可能ですよね。役員面接とかすごく偉い立場の人が出てきたとしても、「すげえ偉そうにしてるけど、今あなたが対峙している人は超変なパンツ履いてるんだよ~」と思えば、その状況を楽しむ自分という客観性が生まれます。なんでもいいので、「面接を受ける自分」とは別の自分を持ち込むというのは、オススメです。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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