形を変えた米中両国のレアメタル戦争
さて、ここでアンチダンピング戦争(AD戦争)の話をしたい。世界最大のソーラーメーカーの中国のサンテックは今年3月に倒産した。世界のTOP10社のうち、実に5社が中国メーカーだが、なぜ世界No1企業の同社だけが破たんしたのか?これは、明らかにアメリカのAD税制に抵触した生贄である。
真実はこうだ。2011年までは対米輸入関税率はシリコン型太陽電池で31.14%だったが、同年の中国からの対米輸出は前年比倍増の31.17億ドルに膨れ上がった。中国のソーラーメーカーが過当競争のため安値輸出に陥り1年でソーラー価格を半値にしたのである。
アメリカのソーラーメーカーが工場を閉鎖し経営破綻となったのは言うまでもない。その結果米国のAD税率は31%から一気に249.96%に引き上げられた。中国のソーラーメーカーは生産が3~4割落ちたが、その後の在庫の積み上がりは深刻で全社が赤字決算となった。中国5社の中でサンテック社だけが、無錫(むしゃく)の地方政府の関連会社だった。他の4社は中央政府の直系企業だから政府の全面支援を受けた。要するにサンテックはAD戦争のスケープゴートとなったのだ。
同社は、2001年の創業。06年には会長兼CEOの施正栄氏が中国の富豪ランキング首位になったこともある。その後市況の悪化に伴い、2012年3月末の負債は35.7億ドル(約3600億円)まで増加。ついに資金繰りが行き詰まり、3月15日に期限を迎えた5.4億ドル(約540億円)の転換社債の償還ができなかった。これは政府主導の産業発展モデルの悪影響でGDP至上主義の競争が招いた悲劇だ。中国がイナゴの大群の様に過剰競争を対外輸出に続ける限り、同じ繰り返しが起こるだろう。事の本質はパネルの過剰生産だけではなくポリシリコンの過剰生産が問題なのだ。
従って今後も日本市場向けの投げ売り状態は止まらない構造になっている。中国からの大量輸出攻勢が日本市場でも問題になっているが、いずれ日本のソーラーメーカーも工場閉鎖になり、後は倒産を待つしかない状態との見方が強い。
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