欧州エアバスが日本で逆襲する日 日の丸エアラインをめぐる、米ボーイングとの激しい攻防
ボーイング比率を高めたJALの事情
なぜボーイングはここまで日本大手に優位だったのか。
「1980年代、自動車や半導体の分野で、日米貿易不均衡の問題が発生した。航空機はそのマイナス(不均衡)を埋めるために使われた面もある」。ある航空機メーカー幹部はこう振り返る。特に1953年施行の日本航空株式会社法の下、半官半民の会社として設立されたJALは、代々、日本政府の強い影響力を受けてきた。時には政治的配慮から、航空機購入でも米国企業を優先せざるをえなかった。
航空機は1機当たりの初期投資が膨大だ。パイロットは機種ごとに免許を獲る必要があり、キャビン・アテンダント(CA)や整備士もそれぞれ訓練を積まなければならない。だからいったん買うと、航空会社としてはなかなかメーカーを換えられないのだ。
ただしここ10年間くらい、世界のマーケットでは、エアバスが既存のボーイングの受注をひっくり返している例も目立つ。
というのも、これまで大量輸送時代を可能にした“ジャンボ”=「B747」を筆頭に、小型機から大型機まで抱えていたボーイングに対し、2000年代に入って、エアバスも機種のラインナップを揃え始めていったからだ。
技術面でもエアバスは進化した。小型機「A320」で、旅客機として初めて、「フライ・バイ・ワイヤー(FBW)」というデジタル技術を採用。コックピットから操縦桿をなくし、ジョイスティック型に変えた。従来の機械による油圧制御から、コンピュータによる電子制御をより優先したというわけだ。ボーイング、エアバス両社のこうした設計思想の違いは、今も議論の的となっている。
そして日本でも、スカイマークやLCC(格安航空)などの新興勢力が登場。ボーイング一辺倒だった状況が次第に変わりつつある。
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