ある大手メーカーは、就職情報誌が全盛だった頃、採用数100人程度に対して2000人程度の応募だった。しかし、就職ナビに変わってからは、4万~5万人のエントリー数になったという。
さらに、就職情報会社間のエントリー数獲得競争が激しくなり、「一括エントリー機能」という、同時に複数の企業に対して応募できる機能が登場した。その結果、学生が知っている企業に安易にエントリーするようになり、その数は膨大な量になった。また、「就職人気企業ランキング」の投票を就職ナビ上で実施するようになり、上位に入りたい大手企業が就職ナビ上でPR合戦をするといった状態にもなったのである。かつて就職情報誌で行われていた人気企業ランキング調査では、調査対象が偏差値上位大学の学生に限られていた。
集まった大量のエントリーを大手企業はどう扱うか。すべてを相手にするわけにはいかず、エントリーシートの応募があっても採用対象大学のところで切る、いわゆる”学歴フィルター”が行われるようになった。また、会社説明会でも学校名で自動的に受付枠を設定する学歴フィルターを含め、就職ナビの企業側の管理画面では学校別にグルーピングができるようなさまざまな機能が加わっていった。
企業は詳細な採用実績校の開示を
こうした大手企業の採用活動で対象大学やターゲット校になっている学生はいいが、それ以外の学生は一生懸命書いたエントリーシートがどんどん落とされることになる。全国で大学数は約780校あるが、著名な大手企業の採用対象大学は、偏差値上位20校程度、多くても30~40校くらいだろう。それ以外の多数の大学の学生は、エントリーシート段階で落とされる。企業は就職ナビ出現によって「落とすための採用活動」を余儀なくされているのだ。
最大の被害者は言うまでもなく学生である。就職ナビの普及でエントリーシートを採用する企業が増えていった結果、学生は長期間自己分析をやり、大変な労力をかけてエントリーシートを書くことを求められている。個別の会社説明会への参加申し込みも、採用対象大学の学生でなければ人気コンサート並みの競争倍率で(まったく席が取れないケースもある)、参加できる可能性が少ないのにもかかわらず、説明会の申し込み作業を続ける学生も多い。
著名な大手企業ばかりエントリーすると、学校名だけで落とされてしまい、延々と就職活動を続ける悪循環に陥ってしまう。学校の講義にも出られなくなり、結果的に学業圧迫が起こるのである。
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