就活中の学生や転職に向けてひそかに活動しているビジネスパーソンなどにとって、自分が勤めようと考えている会社の給料はもっとも気になるところだろう。世間並み以上、あるいはもっと高い水準を求める人も少なくないだろうし、水準そのものはあまり気にせず「自分のやりがいを優先する」人もいるかもしれない。
ただ、今は業績が良くて給料の高い会社でも需要の減退、競争激化、外部環境の変化などによって業績が悪くなり、給与の引き下げが避けられないケースも少なくはない。
東洋経済オンラインは、主要な上場企業が過去10年にわたってどれだけ従業員の平均年収を増減させたかを調査。第1弾として「平均年収が伸びた『トップ500社』ランキング」(8月8日配信)をお届けしたが、今度は逆に平均年収が落ちた約1000社のうちワースト500社のランキングを紹介する。
約3600社の上場企業すべてを網羅している『会社四季報』(2016年夏号発売中)で集計しているデータを活用した。10年以上前から上場し、平均賃金を継続して公表している約2350社を集計の対象にした。平均年収が落ちている会社の中には業績不振で、従業員数を削減している会社も少なくないため、従業員数の多寡にかかわらず、集計対象とした。ただ、給与水準が製造現場などの実態とも離れやすい純粋持ち株会社などは除いている。
グループ企業については、全体で連結ベースの年収を算出するのがベストだが、基データが原則として単体会社となっているため、単体の数字であることをあらかじめお断りしておきたい。本ランキングには、過去10年での平均年収減少額のほか、同減少率(%)、直近の平均年収、平均年齢、平均年齢の増減も加えている。
ワースト2社は300万円超の大幅ダウン
ここ10年での平均年収減少額が357万円(直近年収は304万円)ともっとも大きかった上場企業は、バナーズ。埼玉県熊谷市に本社を置く会社だ。発祥は製糸業だったが、投資グループの経営参画によって現在はホンダの新車販売を主力としつつ、収益源は不動産賃貸業となっている。
2位はファステップス。平均年収は10年前から325万円下がり、直近は361万円となっている。東京・新宿に本社を置く携帯電話ネット技術のシステム構築会社だ。広告代理子会社の売り上げ比率が高いのが特徴で、ここ数年は赤字を連発し、財務基盤を傷めてしまったことが平均年収減につながったとみられる。
過去10年で年収が100万円超下がった会社は106社もあった。今回の集計対象約2350社のうち、約1000社で平均年収が減少したということは、ここ10年で全体の4割前後の企業では実質的に給料が上がらず、むしろ下がっている傾向がある。業績が好調な大企業では逆の動きが見られるということは、やはり、格差は広がっているというのが日本経済の実体なのであろう。