日本版ISAは、顧客基盤を拡大するチャンス インタビュー SMBC日興証券 久保哲也社長
日本版ISA導入前に、日興流の新スタイルを確立へ
――しかし、環境的に大きく改善し、市場規模も拡大すると、一般的には着実性への追求が甘くなりがちです。
そのリスクはある。収益が上がっているので投資をどんどん行って「今こそ行くぞ」という気持ちがすぎると、足元をすくわれるという懸念はある。したがって、「脇が甘くならないように」と言っている。もちろん、成長志向でいくが、ベースは変えずに、筋肉質でいることが大事だ。
それから、証券業は国内における販売力が強くないと話にならない。野村、大和と並んで、日興はやはり、基礎力、足腰がしっかりとしている。ただし、従来のやり方でいいのかという点について反省すべきところもあるかもしれない。そこはよくみていく。日本版ISA(投資非課税制度、愛称、NISA)が導入される前に、いろいろな商品の投入のあり方、手数料のあり方など、新しいスタイルを根付かせていく必要があると思っている。
――日本版ISAは、証券会社、銀行、あるいは銀行系証券会社の姿勢、体質が透けて見えるという意味で怖い制度ではないでしょうか。
そのとおりだろう。銀行とのコラボレーションとも関係するし、個人戦略が大事な段階に差しかかっている。その意味で、銀行と証券で本格的な協業を5月から始めた。初めて、銀行から10名が日興の営業店の課長ポストに配置された。個人部門のエリートたちだ。そうした取り組みを拡大させていく。
ざっくりとした言い方だが、1カ月に1万口座ほど新規口座が取れている。日興で取れている部分と、銀行で取れている部分で半々程度だ。それだけ新規顧客マーケットには余力がある。今までは証券仲介という形で、17万口座を獲得し、預かり資産残高は約1兆円に達した。まだ、ここは伸び代がある。
世の中には、投信に精通している方もいる一方では、あまり投資を熱心に考えていない方々も多い。日本版ISAの導入は、そういう方々に低リスクの証券商品へ一部資金を回してもらう良い機会となる。そのためにも、親身になって投資のアドバイスができるかどうかが問われる。長期投資のために適した商品戦略を掲げていきたい。
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