日本版ISAは、顧客基盤を拡大するチャンス インタビュー SMBC日興証券 久保哲也社長

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銀行の効率性など取り入れ、日興の強みを生かす

その一方で、銀行と証券はずいぶんと異なる。もちろん、グループとして取り組むところもあるが、すべてを銀行の色に染め上げるというようなことはやってはいけないと思う。餅屋は餅屋であることを忘れてはいけない。効率化など銀行流のよい部分は取り入れつつ、日興のよさは残さないと。つまり、どこで銀・証の均衡を築くのか。大変に難しい課題だが、きちんとやっていく。

とにかく、日本版ISAには、銀行と力を合わせて、そうとうに頑張ることは間違いない。1500兆円もの個人金融資産があれば、もっと証券投資が増えていい。ところが、そうなっていないのは顧客に投資の成功体験が乏しいことと、残念ながら、一般の人たちの立場から見るかぎり、証券会社に対する信頼感が高いとは言い切れない部分があるからだろう。これは否定できない。

そういう人たちに対して、銀行が提供する商品とは異なると同時に、安全な商品を提供すれば、顧客基盤はもっと拡大する。それほど利益が上がらなくても、安定した商品を提供して顧客基盤を拡大させて預かり資産を増やしていく。その取り組みを日本版ISAで思い切ってやっていく。

ただし、これもまた難しい課題ではある。収益と預かり資産との間には二律背反のような部分があるからだ。あたかも製造業の場合、収益なのか、シェアなのかを問われ続けたことと類似している。難しいテーマだが、着地点は必ず見いだせる。

――市場回復という今回の局面において、証券ビジネスが質的に向上できないと、日本の将来の絵も描きにくいでしょう。

これをきっかけに、アグレッシブに一過性の収益を追求するということは絶対にやってはいけない。まさに、必要なのは持続的成長への追求だ。そのときだけいい経営というのはだめだ。

わが社の経営理念の中には、「お客さまとともに発展する。お客様を大切にする」という言葉がある。何をするにしても、それが原点だ。わが社では、会社のパソコンをあけると、必ず、まず、この経営理念の言葉が画面に出てくる。経営理念は企業の憲法であり、守らないといけない。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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