コカ・コーラのO2Oが、“先進的”な理由 店舗を持たない“店舗誘導型”O2Oの展開力

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小売り・流通のO2Oとの決定的な違い

コカ・コーラのようなメーカーが考えるO2Oは、店舗を持つ小売り・流通企業の取り組むO2Oとは大きな違いがある。

小売り・流通企業の場合、販路は自社が運営する店舗とネット通販のふたつのみ。O2O を行うには、そのいずれかに絶対に連れて行かなければいけない。

ところがメーカーは違う。たとえばコカ・コーラだと、コンビニ、スーパーマーケット、飲食店、酒屋、ファーストフードから自動販売機まで販路が多様化している。

“ブランドを好きになってもらう”施策を強化すれば、各チャネルで商品を選んで手に取ってもらえる。チャネルが多様化している分、卸先と協業するなど、いろいろな形態のO2Oができることが強み、と言えるのだ。

2012年に実施したJリーグとマクドナルドのタイアップキャンペーンもそのひとつ。

3社ともにメリットがあった、Jリーグ、マクドナルドとのタイアップキャンペーン

消費者は、自分が応援するJリーグのクラブチームをコカ・コーラパークで選ぶ。選んだチームが試合に勝つと、マクドナルドのクーポンがもらえる。単にクーポンを配信するO2Oとは違い、ゲーミフィケーション(ゲームの仕掛け)を活用している。

「3社ともにメリットがあるwin-win-winの施策。コカ・コーラパークの会員には、Jリーグに興味がない人もいたが、これをきっかけにJリーグに興味を持つ。逆にJリーグファンが、コカ・コーラパークに登録してくれるきっかけにもなった。もちろんマクドナルドの売り上げにも貢献した。約25万人が参加してくれた」と足立氏は話す。

日本コカ・コーラは、消費者に新しいブランド体験を与え、ファンを育成するために、先進的なO2Oに取り組んでいる。これからも新しいサービスが生み出されるに違いない。コカ・コーラの軌跡を追えば、O2Oが新たなステージに上がる道が見えてくるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の連載が本になりました。『O2O新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける』(東洋経済新報社)として発売中。Kindle版などの電子書籍も展開開始。

 

松浦 由美子 ITアナリスト

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まつうら ゆみこ / Yumiko Matsuura

ITアナリスト。

ITエンジニアとして半導体ウェハ検査装置の開発や原子力・ETCなどのインフラ制御系システムの開発、大手印刷会社のIT技術センター部門でセキュリティ関連のサービスや画像情報データベース、地図情報サービスなどのWeb開発に携わる。現在は、「ITからリアル世界への翻訳者」として、テクニカルな話題を一般読者にわかりやすく解説することをモットーに活動中。

著書に『O2O 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける』(東洋経済新報社、 2012.10)、『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!- ネットとリアル店舗連携の最前線』(平凡社新書、2014.1)、東洋経済オンラインにて「O2O ビジネス最前線」を連載中。

テレビのニュース番組やラジオ、講演など「O2O」に関する出演多数。
連絡先:松浦由美子公式ページ

 

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