今の若者はプライドが高すぎる

“戦う哲学者”中島 義道氏に聞く

会社を全部個室にしてしまえば?

プレハブでいいから会社を全部個室にして、ごくたまにほかの社員と一緒であるようにしたら、かなりの人が就職すると思います。いつも後ろ向きな暗い人だけでできている実験会社を作ってみるのも面白いですね。社員食堂も何もなくて、行事やレクリエーションも行きたい人だけ行けばよくて、ほかの社員が来ているかどうかもよくわからないような(笑)。

――家に閉じこもって、1人でできる仕事を目指すのはどうでしょうか。

作家のような1人でやる仕事を多くの人が望むのですが、難しいですよね。今、芥川賞を目指す人が10万人以上と言われています。みんな尊敬されるタイトルが欲しいんです。東大を出ても金持ちにはなれないことは知っているけれども、「この人は東大を出た」という「知的なもの」としての評価を求めているんです。ここに哲学をしに来る人のひとつの理由は、「私はヘーゲルやカントを読みます」と言うと、なんとなく人を見下せるから。そういう人の多くは、すぐ辞めてしまうのですが。

――多くの日本人は、毎日好きでもないものを売ったり、何のためにやっているのかわからない仕事をしなくてはなりません。仕事で満足感を得るには、どうしたらよいのでしょうか。

他人から尊敬されるとしても「人間としてはすばらしいけれども、仕事はまったくできない」というのではダメで、生活の糧を得ている仕事を通じて他人に尊敬されなければならない。しかも、その仕事が生きがいのあるものであるか、あるいは自分のとても好きなことをするかでないと、満足できない。

誰でもできることをしておカネをもらっても、そんなに満足感を覚えません。コンビニの店員を一生やるのは大変でしょ。組織で、何々会社の何々課長であるということを除いたら何もなくなっちゃう人や、誰ともすぐに交換できてしまう仕事はつまんない。「哲学塾 カント」は幸か不幸かほかのものとは交換できないから、ほかの人がここをやってもダメですよ(笑)。

私は若いときから、「自分だから」読んでくれる、「自分だから」評価されるという者にあこがれていました。三島由紀夫が書いたカフカ論だから読む、このニーチェ学者の書いたのならいい、この演奏家の演奏だから聴く、というように。昔は学者になろうと思っていたけど、どんな優れた学者でも何百人のカント研究者の1人では面白くないと考えるようになりました。

――「好きなことをする」のほうですが、好きなことが見つからない場合はどうしたらいいのでしょうか。

それは“好きなこと”を絞っているからですよ。人に尊敬されることとか、親が納得することとか。そんなこと言ったらできるわけないじゃないですか。本当にのんべんだらりと生きたかったら、それに邁進すればいいんじゃないですか?

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