株価高騰の「串カツ田中」、爆走継続への課題 大阪下町のソウルフードが日本を席巻する?
9月中旬の連休、東京都内の「串カツ田中」を訪れた。住宅街にある店舗ということもあり、店内は家族連れ、常連ばかりが多い。カウンター席では、お酒好きそうなお父さんの横で小学生の娘がアイスクリームを頬張ったりと、雰囲気は地元の大衆食堂そのもの。18時を過ぎるとすぐ満員になった。
スピード上場した串カツ田中
大阪名物・串カツを専門にした居酒屋、「串カツ田中」が9月14日、東証マザーズに上場した。初値は4425円と公開価格の3900円を大きく上回った。その後の株価も堅調に推移している。
同社は2008年12月に1号店を東京・世田谷区にオープンし、2015年12月には100店舗を達成。現在の店舗数は129店と急拡大の途上にある。業績も順調で、今2016年11月期の会社計画は、売上高40.58億円(前期比61.6%増)、営業利益2.93億円(同45.3%増)と大幅な増収増益を見込んでいる。
1号店開設からわずか8年足らずのスピード上場に株式市場の関心も高い。同社の貫啓二(ぬき けいじ)社長は「串カツを日本の食文化、ソウルフードにしたい」と全国1000店体制の構築を掲げる。
串カツ田中は、副社長の田中洋江氏が父親、故・田中勇吉から受け継いだ味を大阪・西成から持ってきたものに由来している。ソースと揚げ油、衣は独自材料を使用、レシピは社外秘と差別化を図っている。串カツは1本100円から、生ビール390円という価格に抑えている。
居酒屋市場は人口減少や若年層の酒離れ、“ちょい飲み”や“家飲み”の伸長など逆風が吹きつけている。だが、こうした環境下でも、低価格と品質にこだわった専門居酒屋の業績は好調だ。
小売業界では百貨店から総合スーパー、そして専門店へと、総合型からカテゴリーキラーに盟主が移る時代があったように、居酒屋業界でも、専門店業態にシフトしている。何でも一通りそろう「和民」や「魚民」といった総合系居酒屋に対し、280円均一の焼き鳥店を展開する「鳥貴族」や串カツ田中のほうが、消費者に対して明確に強みを訴求できるからだ。
串カツ田中は商品もさることながら、他社が選ばないような小さな商圏に立地していることに特徴がある。1号店の世田谷をはじめ生活道路沿いの住宅地や駅近繁華街といった小さな商圏で多く店舗を増やしてきた。
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