どこにもない価値を、生み出す人の習性 あなたに「構想」と「アドリブ」はあるか?

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つまり、1人で部屋のじゅうたんのしわを伸ばすから最後にじゅうたんはきれいになりますが、これを2人でやったら、じゅうたんのしわは伸ばす2人の境目に1本のしわが残ってしまい、これが3人でやったら2本のしわができてしまいます。つまり、それぞれの個人の構想をくっつけると、その境目で齟齬が発生するのです。

こういったことは1人でやらないといけないのではないかと思います。だから、プロデューサーというのは孤独なのです。しかもプロデューサーその人は、何か特別にある技術の専門家としてある分野で秀でているわけではないかもしれません。ほかの日本人も同じように使いこなしている言葉のように、そのネタは同じだけれども、組合せ方がオリジナルであれば、独自の価値を生み出しうるということです。

その人にしか使えないネタがあるわけではありません。そのため個々の要素に模倣困難性はないのです。しかし、それを組み合わせることがプロデューサーの仕事であり、アートなのです。

プロデューサーの資質

そして、単に天才プロデューサー万歳、ではなく、結果として成功するプロデューサーというのは、どういうところから生まれるのかを考えると、すでにある事業に対応したフィルターに引っかかる資源が集積しているような既存の組織からではなく、広く社会や地域コミュニティのような雑多なフィールドを探索し、いろいろな要素を普段から引き出しにためておくことだと思っています。

これは組織に属する会社員はプロデューサーになれない、ということではありません。今の仕事に最適化された職場で手に入るネタだけでは、新しい組合せが生まれにくい、ということです。

というのも、産業集積としての日本の大都市というのは世界的にも恵まれた、いろいろなものづくり要素の遺伝子プールみたいなところがあります。これほどいろいろな技に秀でた、いろいろなことをやっているものづくりの企業が、遠くてもせいぜい電車で数時間のところに端から端まで行っても固まっているというのは、世界でもほかにありません。

日本というのは、ものすごく密集した近い地域で、およそたいていの産業財が揃うという、ディスカウントストアのような多様性の利点を持っています。誰もこの集積の全体を把握できないほどの、量と質と多様性を擁している工業地帯があるので、本来日本はそれら既存の要素の組合せの試行錯誤だけでも、まだまだ試していない可能性があるのです。

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