どこにもない価値を、生み出す人の習性 あなたに「構想」と「アドリブ」はあるか?

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これはもちろん、産業の発展の障害になるような規制についてもどうかと思いますが、自分たちが本当にそういった機能を商品につけたらこういう便利さがあり、それをいつか実現したいと思っていたので、前々から根回ししていた、というような大局観が欠けていたことを如実に示しています。あまりにディレクター原理ばかりが強い組織になっていたのではないでしょうか。

つまりこのメーカーには、顧客の生活文化をこのようにしていきたいという構想が日頃はなく、開発陣も急に上から何か言われたから、いかにも安易に流行の「スマート家電」というコンセプトを借りてきてただ機能をくっつけた、と評されてもしかたないでしょう。これはむしろ直接そのエアコンを開発した部署を責めるべき事例ではなく、経営陣の哲学の貧困さが問題だと思います。

技術知識については、優秀な技術者がいれば借りてくることができる。しかし、自社がどのような価値を社会に提供していくのか、その大きな図面を描けるのは、プロデューサーとしての経営者にこそ期待するべきものです。小林の事例と引き比べると、そのことがはっきり見えてきます。

小林には、なぜそれができたのか。個人の資質ももちろんですが、当時の阪急電鉄の組織構造もそれを促進していたでしょう。経営者としての小林は事実上のオーナー創業者であり、トップとしてワンマンだったからこそ、プロデューサーとしての活躍をしやすかったといえます。

じゅうたんのしわは1人で伸ばせ

価値をプロデュースする、組み合わせるというのは、いろいろな要素を持ち寄るからこそ、逆に1人の人間が責任者として全体を統合しなくてはいけない、そうでないと戦略の整合性が保てないということがあります。

言ってみれば、これは「じゅうたんのしわ伸ばし」です。プロデューサーとしては自前で車両や線路をデザインできるわけではなく、百貨店のビル1つ設計できるわけでもありません。それでも、それらを組み合わせた全体のエコシステムが優位性を持つには、どうすればよいでしょうか。ほかの人も手に入る要素を、組合せの妙で価値を生むからこそ、その組合せ方が絶妙でなくてはいけません。

それは複数の責任者の合意性などでできることではなく、ワンマン小林が1人で頭の中で考えたからうまくいったのではないかと私は思っています。それがたとえるなら、「じゅうたんのしわ伸ばし」になります。プロデューサー的に、商品が社会とどのように関係を築いていくか、という構想は、1人が責任を持って策定しなければならないでしょう。

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