コミュニケーションで言葉が語られると、記憶が勝手に呼び起こされて話ができてくる。自分の持っている日本語の記憶で話はできているのだ。それも思い出そうと思って記憶を使っているのではなくて、勝手に思い出されているのだから、普段は気づかない。それゆえ、互いに共有しようという意識がないと、勘違いやすれ違いが起こる。結局は、ミスコミュニケーションがコミュニケーションだとの前提に立つことだ。
──コミュニケーションでマスターになるには。
まず「答えより応え」。交わされている言葉だけにどうしても意識が行ってしまうが、表情や言葉のトーンといった雰囲気を気に掛ける。「やります」と言っても「本当に」か、「やる気はないが」か。質問しても部下が答えてくれない、あいつはあまり話さないとしても、いわゆるアンサーの答えは出ていなくとも、レスポンスの応えは必ず出ているものだ。そのレスポンスをきちんととらえられるのが上級者といえる。
そこに絡むのが「事柄と人」だ。事柄も人に焦点を合わせる。たとえばビジネスの文脈だと、四半期の目標を立て何をするか具体的な事柄を決めて、ただシートを埋めていくのでは、なかなか人は動かない。この目標で君はどう思う、あなたならどうしたいと、主語を人にしていかないと進まない。本当のプロ集団だったら事柄だけで動くかもしれないが、普通の人はいろいろな葛藤を抱えていたりする。人に戻し、そこに入っていかないといけない。
度忘れ予防にはメモやチェックリストが有効
──冒頭の度忘れのメモリーミスにはどうしたらいいですか。
メモリの容量が小さいから、忘れるものだと割り切ったほうがいい。忘れることはワーキングメモリを圧迫しないための一つの能力と考えて、これは常套手段だが、メモやチェックリストを記憶補助の仕組みとして使うことだ。
──マスターへの道は?
いわゆる記憶術が有効で、これは「イメージ」と「場所」がキーワード。古代ギリシャの時代から変わっておらず、世界記憶力選手権の覇者もこのイメージと場所を記憶の武器にしている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら