サッカー界を牽引する「広島出身」監督の視点

U-16の4強入りの影にも名GMの功績

森山が選手時代に今西からずっと言われ続けた言葉だという。師の教えを、日の丸をつけた15歳、16歳に本気で伝える。

才能あふれる子どもたちには、決して平坦な道を歩ませてはならない。つねに、超えなくてはいけない壁や、息を切らして挑むべき坂道が彼らには必要だ。練習メニューや課題を与えるだけでなく、選手のモチベーションをアップさせる術を森山は今西から継承している。

ここで、もうひとりの「育将」の話をしたい。

「育成のジェフ」

かつて「育成のジェフ」と呼ばれ、広島と並び評されたジェフ千葉には、祖母井秀隆(65)がいた。これも今西と並ぶ辣腕GMとして名を馳せた。あのイビチャ・オシムを日本に連れてきた男だ。フランス・グルノーブルを経て、一昨年まで京都サンガでGMを務めた。

祖母井はジェフ時代、大阪YMCAで幹部候補とも言われる人材だった池上正(59)を勧誘。アカデミーのコーチをはじめ、小学校などを巡回指導する「おとどけ隊」を任せた。当時は地域の学校や幼稚園にJリーグが無償で指導するなど、画期的なことだった。

しかも、その内容と池上の指導ぶりに、付き添った教師たちが舌を巻いた。ただ単にサッカーを体験させるだけでなく、今の子どもたちに不足がちと言われるコミュニケーション能力や自尊感情を高める仕掛けがいっぱい詰まっていた。それらは、祖母井から伝授された指導哲学がベースにある。

「池上、そろそろジェフも地域に何か貢献しなきゃね」

祖母井のそのひと言から、おとどけ隊が生まれたという。

「祖母井さんはいつも僕らに何かを具体的に提案するのではなく、考えさせる。部下が自分で生み出したもののほうが、取り組みが本物になるということを知っているんでしょう」(池上)

池上はその後『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(小学館)など6冊もの本を著し、怒鳴って指示命令する場面が多く見られたジュニアサッカーの指導現場を変える力になった。日本サッカー協会をはじめ、多くの団体が指導者や保護者の啓もうに活用してきたデンマークサッカー協会が掲げる「少年指導の10カ条」を翻訳し広めてもいる。

祖母井が京都に移籍した後に、池上も京都へ。そのすぐ後に、祖母井に誘われてやってきたのが、現京都サンガジュニアユースコーチの岸本浩右(48)だ。岸本はジェフでオシムが監督を務めた3年半、トップのコーチとして世界で五本の指に入ると言われる名伯楽のコーチングを身近で見てきた。

フットボーラーは、走り続ける力と、自分で考える力が重要大切であることをオシムから叩き込まれた。

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