サッカー界を牽引する「広島出身」監督の視点 U-16の4強入りの影にも名GMの功績
そんな岸本が京都で育てた福岡慎平(16)が、奇しくもキャプテンとして「森山ジャパン」を率いる。中盤で誰よりも走って汗をかくボランチは、森山が「福岡となら心中してもいい」言うほど大きな信頼を得ている。
昨季まで育成部長だった池上曰く「まじめで、サボらず、頑張れる子。最後まで走りきれる子はなかなかいないから貴重」。16歳のW杯切符獲得は、日本サッカーを思う先人たちの数々のDNAが注入された結果なのかもしれない。
もう一度、今西の話に戻ろう。
脈々と継がれるのはまれだ
サッカーのみならず、スポーツの強化や発展に寄与した人をたくさん取材してきた。連覇し、日本を代表する選手を育てるなど輝かしい成果を出した人はたくさんいる。
ただし、創ったものが、ここまで多くの他者によって脈々と継がれる今西のような人はまれだろう。
「徳は孤ならず、必ず隣あり」
本のタイトルでもある論語の言葉は、今西が社長を務めたFC岐阜にかかわった中小企業団体中央会会長の辻正が、彼に贈ったものだという。その意味とは。
商売している人を見ていると、陰徳を積めば、自分の代ではなく子どもの代で結果が出る。その子どもは次の代のためにまた徳を積んでおく。そして、陰で徳を積んでいる人は、孤独に見えても必ず隣人が見ていてくれる――辻はそのようなことを話している。
スポーツで人を育てる「育成」とは、そういうものに違いない。辻は、今西が教え子である森山たちや、その次世代の子どもたち、つまり日本サッカーの未来のために徳を積んでいると感じたのだろう。
「俺が、俺が」の「が(我)」を捨てて、未来を継ぐ者へ託しながら黙々と徳を積む人の功績は、必ず誰かがわかってくれる。
徳を積んだ人の隣人になった気持ちで、来年U-17W杯ではより進化した「子どもたち」に注目してはどうだろう。
最後に、デンマーク協会が掲げた指導の10カ条を記しておく。
「子どもたちはあなたとともに、サッカー人生を歩んでいる」の一文は、今西や祖母井にぴったりだ。
(=敬称略=)
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