さらにレアアース資源の開発は地球温暖化問題だけではなく放射性物質(ウラン、トリウム)の発生が深刻な問題になっている。先進国では除去処理をした後のレアアースを輸入するからハイテク素材としてのレアアース需要は増加の一途である。一方、そのあおりを受けるのは資源国であり、放射性物質の処理を引き受ける発展途上国である。先進国日本は放射性物質の処理技術では世界一である。日本が世界に貢献しなければならない問題を発展途上国に押し付けているのは明らかに過失犯である。これからの環境経済において「いいとこ取り」は通用しない時代に入ったと考えるべきだ。
中国報道をうのみにする日本
「中国のレアアース資源は枯渇が進んでいる」という中国の報道に対する思い込みも間違いだ。たとえば、内モンゴルの包頭にある白雲鉱山の資源量は3600万トンと試算されている。それに対し、全世界のレアアース需要はいいところ12万トン止まりである。と言うことは、白雲鉱山だけでレアアース資源の全世界需要の300年の資源が存在することになる。可採埋蔵量ならば、資源価格が上がればさらに資源量は増える。資源が枯渇するという話はウソである。
世界をみても、アメリカのモリコープ社でもオーストラリアのライナス社でも、世界の必要量は補てん可能だ。レアアース産業、特に資源開発の部分は経済リスクが高いので日本の産業界が本気で挑戦しないだけだ。経産省のせっかくのレアアース開発予算さえ消化できないのは、産業界の怠慢ともいえる。私には日本の産業界の過失的「なさざる罪」だと思うが、これは言い過ぎだろうか?
一方、「中国があたかも大資源国であり日本は中国に依存している」というニュースは常にメディアが好むところだ。たしかに特定の資源について、中国は大資源国家だ。レアアースやタングステン、アンチモニー、バナジウムなどは資源量も生産量も世界一だ。だが中国の人口が13億人で資源量を人口で割ると、世界では第53番目の資源国家にすぎない。レアメタルなどは例外中の例外で、他の資源を見ると中国の資源は不足している。ところがメディアはなぜか、中国を過大評価する。中国が資源ナショナリズムに走らざるを得ないのは大資源貧国であるからなのだ。なぜか、メディアは被害者意識をオーバーにあおる傾向があるが、レアアースの資源国は何も中国だけではない。世界中に腐るほどあるから本当のことをいえば「選り取りみどり」で経済性を優先させれば良いのだ。筆者にとっては深刻な顔をして国難に見舞われた様に報道するのが、不思議で堪らない。
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