日本が環境に強いという思い込みにも筆者は一家言ある。日本は環境問題で1970年代に多くの問題を抱え克服してきた事実はある。だが産業発展のプロセスであり今の発展途上国にもある当然の問題だ。何かと言えば日本人は環境技術で世界をリードすると言いすぎる傾向にあるが、私は違和感を持っている。環境分野にもいろいろあるが原子力発電所などの先端分野は別にして、例えば中国の一般的な環境問題は確かに深刻だがそれは経済発展を優先にしているだけで、金さえかければ解決可能な技術水準に到達しているのが真実である。
環境経済はこれからが本番である。日本がリードする最先端環境技術は確かに存在するが、発展途上国の必要とするものは大げさな話ではない。日本は「上から目線」の環境技術で支援をするという言い方を避けて「環境投資をするから資源を出してくれ」と言うべきである。
今こそ日本の資源政策を立て直す時だ
もうひとつ、「日本の最大の資源は人材だ」という概念にもケチを付ける。こと資源問題については、残念ながら人材は不足している。70年代までは日本に鉱山が存在したが80年代以降、閉山した結果、企業も国家も鉱山業に力を入れなくなった。日本には今や70歳以上の人しか鉱山技術者はいない。いわば日本は百年の計を狂わせる意思決定をした。仮に80年代に日本の若手鉱山技術者の養成を海外で行っていたら、いまのような情けない状況にはならなかっただろう。同じ経済条件の英国は資源国ではないが旧英領の豪州、カナダ、南アフリカなどに英国系の供給基地を保有している。
以上の数ある誤解や曲解や思い込みを乗り越え、われわれは、何をすべきかを真剣に考えなければならない。こと資源に関する限り、今の日本に人材が豊富だというのは恥ずかしくて言えない。
世界の資源インフレは、いずれまたやってくる天災のようなものだ。我が国は中長期的なグランドデザインをベースに戦略的な資源政策を実行すべきだ。レアメタルやレアアースの対応策は、まず足元を固めるところから始めなければならない。
短期策としては、レアアース資源について、今こそ中国をはじめとする資源国に対して日本ができる協力をするべきだ。モノがない時に慌てふためいて政府ミッションを資源国に送り込むのではなく、将来の資源問題を少しでも緩和させるために、地道な政治的な交渉も必要になってくる。
中期的な政策としては、今から長期的な資源の制約を乗り切るために、ある程度の技術流出は覚悟せざるを得ないだろう。企業は存亡をかけて利益を追求するのは当然のことである。しかし日本の国益を考えると、空洞化スピードが遅くなるように制限するような工夫も必要である。技術流出はいったん堤防が崩れると、なし崩し的に移転が始まり収拾がつかない状況になる可能性もあるからだ。
さらに長期的政策としては、やはり資源の確保である。資源企業の買収(M&A)は今ならやりやすい環境だ。資源ブームが去ってしまったように見えるので資源企業は弱気になっている。資源貧国日本は対症療法ではなくて、抜本策を講じるべきである。そのためには資源開発に必要な人材育成も必要となる。
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