HVやEVが「環境や資源に優しい」というのは誤解
この際だから、南鳥島のレアアースだけでなく資源問題についての誤解と曲解と思い込みについて、はっきりさせておきたい。曲解とは恣意的または悪意による誤解を指す。また、思い込みとは、事実の裏付けなしに信じている単純な誤解である。
レアメタル資源にかかわる誤解と曲解と思い込みには、この両方がある。産業界とメディアと評論家や官僚の立場ではそれぞれ微妙に違うから面白い。産業界の誤解と曲解と思い込みは過失犯的だ。一方、メディアは愉快犯的である。さらに、評論家は確信犯ないし知能犯的な側面が多いようだ。以下、代表的な曲解や思い込みをあげてみよう。
レアメタルは金さえ出せば資源国家から供給されるという誤解が、いまだに産業界には根強い。だが、最終的には自国の支配下で資源調達をしない限り入手できない構造になっている。これは長期的にみると当たり前のことだ。ところが短期的には需給が緩むと買い手市場になるから、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」のである。
産業界は資源ブームが去ったという思い込みから強気になって「資源は金さえ出せば手に入る」という単純な誤解をしはじめるのだ。日本の産業界は資源国が技術移転をバーター条件にしてくることはわかっている。しかし長期的視野で資源問題に取り組める余裕を持てるのは一部の大手企業だけだ。
やがて日本の生命線である技術を移転しなければ資源が確保できなくなる。今のままなら結局、日本はさらに空洞化現象が進み、独立国家としての産業構造が維持できなくなる。わかってはいるがこの危機感を日本の産業界はあえて無視しているのだから、過失犯と言われても仕方がないのではなかろうか?
冒頭にも書いたが、HVや電気自動車(EV)を導入した分、環境に優しく資源にも優しいとの「恣意的な誤解」を信じようとしている企業が多い。実は自然エネルギーを導入しても発電所の稼働負担が減らないように、HVやEVを増やすと逆に環境面では負荷が増加するのだ。
地球規模で考えると先進国のCO2は減っても資源国のCO2は増える一方である。レアアースマグネットを増産すれば全てのエネルギー積は減少しても、資源国の環境負荷は増大するのである。レアアース産業は環境経済がグローバルに拡大化すればするほど発展するが、皮肉なことにその資源開発が進めば進むほど、環境問題が発生するというパラドックスに悩まされる。
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