流山市が「ママ創業支援」に乗り出した事情 「母になるなら流山市」から6年
流山市は8年で2倍以上の保育園を整備してはいるものの、急増する共働き世帯の転入に追いつかず、千葉県の発表によると、2016年4月時点の保育園待機児童数は千葉県内でワースト3の146人。世帯の所得によっては他自治体より保育料が高かったり、認定こども園がない、発達障害のフォロー体制が不足しているなど不満の声もある。
通勤時間の問題もある。流山市は、「働きながら子育てができる街」を標榜するが、いくらTXで秋葉原まで20分といっても、実際はそれ以上にかかる。
ないモノは自分で作ろうというカルチャー
「共働き家庭の理想の通勤時間は30分。ところが通勤先にもよりますが、流山だと1時間以上かかる場合もあり、通勤だけで疲れ果ててしまうことも。子育てしやすい環境整備はもちろん、職住近接の職場がもっと必要でしょう」と近藤みほ流山市議会議員は話す。首都圏の平均的な通勤時間は1時間前後。それからすると流山が極端に遠いわけではないが、仕事と子育ての両立を考えると話は違う。通勤時間が大きなハードルになるのだ。
共働きを続けながら子育てをするつもりで転入してきた人たちが仕事を辞めざるをえないとなると、流山市を選んだ意味がなくなる。自治体としては転入してきた人の満足度を高めたいが、立地は変えようはなく、子育て支援も急増する人口に追いつくようにするだけで予算が尽きる。となると、近藤氏が言うように、都心に通勤する以外の就業、職住近接の仕組みを考えざるを得ない。それが母親創業支援につながっている。
面白いのは、流山市にはもともと「ないモノは自分たちで作っていこう」という伝統があり、ママ創業支援の素地があったことだ。
たとえば、流山が市になった1967年以降、図書館のなかった街にあったのは地元の母親たちが協力して作った「どよう文庫」。市施設の和室の一角にリンゴ箱を置き、県立移動図書館から借りたり、自分たちで買ってそろえた本を地域の子どもたちに貸し出していた。この長期にわたる活動が、分館も含めて7館ある今の流山市の充実した図書館事情を生んだ。その市民活動の伝統は今も続いており、市内には10年近くも子育て支援として数種類の講座を続けているNPOがあるなど、人口比で見ると千葉県下でもっともNPOが多いという。
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