流山市が「ママ創業支援」に乗り出した事情

「母になるなら流山市」から6年

流山市内の施設で開かれるスクールは、前後期とも6000円(いずれも講義は6回ずつ)と主婦にも通いやすくなっている。自身も仕事を辞め、流山市で起業した経験を持つ、尾崎えり子氏が講師を務め、ビジネスモデルの考え方や、効果的金額設定、プレゼンテーションの方法などをみっちり教えてくれる。

山下さん以外にも第一期生の中には、イラストレーターやカメラマン、市内の農園でイベントや講座などの企画をするようになった人もいる。秋から後期が始まる2期生からは、カフェなどの飲食業のほかに、ママをネットワークにした多国籍翻訳チームといったユニークなアイデアも出ている。

二度の育休を経て、起業。地元でコーディネートした、母親が自分の夢を発表する「そのままでいこうプロジェクト」に市が共感、創業支援スクールにつながった

また、5月11日には、尾崎氏が立ち上げた、母親向けのシェアオフィススペース「Trist(トリスト)も開業した。

元エステ店を改装して誕生したトリステは、一般的なシェアオフィスとしての利用以外に、企業のサテライトオフィスとして利用することも可能で、子育て中の女性が通勤しなくてもここで働けるようにする狙いがある。また、子育てで一度は仕事を諦めた女性が再び働けるように、スキルアップ講座を実施するほか、ママ同士がネットワーキングできるようなイベントも考えている。

「母になっても働き続けられる街」

オープン時にはすでに日本最大のコスメ・美容総合サイト@コスメを運営するアイスタイルの子会社であるISパートナーズが第一号企業として参画しており、地元のママ8人が採用されている。人材不足に悩むIT企業にとっては優秀な人材が採用できるチャンスでもあり、同社は今後同種のオフィスを増やすことも視野に入れているという。

こうした中、流山市は400万円の初期投資のうち100万円を助成したほか、家賃補助も実施。尾崎氏の創業を支援すると同時に、地域での新たな雇用創出も目論む。「母になるなら」の次に、「母になっても働き続けられる街」の環境整備を急ぐ。

流山市が、ママ創業支援に乗り出した理由のひとつは、前述の山下さんのように働く意欲がありながらも、仕事を続けることを諦める人が少なからずいることだ。駅前から保育園に子どもを送迎する駅前保育送迎ステーションのような独自施策があるほか、保育園の新設や増設も続いているが、それでもすべての母子が満足できるわけではないのである。

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