“構造不況”のシャツ業界で、儲ける方法 専門店トップ、東京シャツの鈴木社長に聞く

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――シャツ工房を本格的に始めた後は、百貨店への卸売りはやめた?

卸は一気にやめられませんでした。実は、2000年ごろに一切やめるつもりでしたが、当時、大口取引先のそごうが民事再生法の適用を申請して経営破綻してしまった。

――そごうへの売り上げは大きかったのですか。

だいたい6割。だから、そごうが潰れたら、当社も潰れると言われ、生地屋とかボタン屋とか債権者が、当社にも詰めかけて大変な騒ぎになりました。なんとか資金繰りをつけましたが。

――壮絶ですね……。眠れない日々だったのでは?

いえいえ。眠れました。気にはなるけど、性格的に眠れるんですよね(笑)。会社におカネを入れようと思っても全然足りないから自己破産だ、と。うちに帰って子どもも小さかったから、もうここに住めないからアパート借りるよとか、そんな話をしたぐらいです。

店舗の売り上げが危機を救った

――どうやって連鎖倒産を回避したのですか。

ひとつはそごうからの入金がギリギリ間に合った。また、それ以上に大きかったのが、そのときにSPAの店舗が一斉に5店舗ほどオープンして大ヒットしたことです。当時は1店舗で平均3000万~4000万円、5店舗でだいたい1億5000万円の売り上げが月商で入ってきた。1カ月に4000万円も売るような同業店なんて、今はとてもなくて、東京シャツも今の月商は店舗平均で約500万円ぐらいです。

小売店では月2回キャッシュが入ってくるのが大きい。特に当社は在庫回転率が年13回、つまり月1回以上という高さで、十分なキャッシュフローを生み出せるのが強みです。それがなかったら資金繰りがつかず倒産していました。そういう意味でもSPA化をしていなかったら99.9%、今の東京シャツはなかったですね。そごうの危機を乗り越えてからは、直営店舗の多店舗化に軸足を移し、今のような10期連続増収の成長を続けています。

百貨店向けのシャツ卸は、当社のようなSPAや紳士服専門店にお客様を取られ、低価格化が進む中で、どんどん潰れていきました。

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