“構造不況”のシャツ業界で、儲ける方法 専門店トップ、東京シャツの鈴木社長に聞く
――シャツ業界の現況を教えてください。
完全に構造不況です。国内の年間販売量は約5000万枚と、数量自体はあまり落ち込んでいませんが、単価が落ちているので売り上げを取るのは大変です。
――しかし、東京シャツは業績を伸ばしている。
60年以上シャツを専門に作り続けてきた、モノづくりへのこだわりが強みです。たとえばシャツの素材は、コットンには毛足の長い新彊の超長綿を使い、肩の縫い目には接着テープを入れています。洗ってもパッカリング(縫いジワ)ができない。これだけでコストが100円弱かかりますから、他社はほとんどやっていません。
最近では、メッシュをシャツに二重構造で入れ込んだ「コンフォートメッシュシャツ」が昨年の春夏で22万枚を販売するヒット商品になりました。通気性がとても高くクールビズ用の商材ですが、あまりにも評判がよかったので、今年は保温機能をつけて秋冬にも展開します。現在、商品生産は海外の協力工場が大半ですが、新潟の村上と千葉の松戸にある国内の自社工場を利用して、新商品開発や技能継承ができるのも特徴です。
こうした品質を備えたうえで、1900円から高くても6000円台という価格でシャツを販売しています。広告や販促をほとんどかけなくても、口コミで「品質がよい」という話が広がって、既存店売上高もここ3年は順調に伸びています。
シャツ一筋に取り組んできた
――もともとは、製造卸業だったんですね。
国内に自社工場を持ち、シャツ一筋に取り組んできました。品質は評判がよく、過去にはイブ・サンローラン社とオーダーシャツのライセンス契約を結んだこともあります。
ただ、私が社長に就任した当時(1995年)は、年間売り上げが27億円ぐらいの中小企業でした。年商100億円以上のシャツの製造卸企業が4~5社も存在した時代です。そもそも同じ商品で、同じ売り方で同じ百貨店や量販店に卸しても勝ち目はない。資金繰りはつねに火の車で、経営はいつも綱渡りでした。
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