吉野家会長「うまい、安いを取り戻す」 並盛り280円へ値下げの真相

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月齢15カ月では若すぎてマイルド感が不十分

「月齢15カ月の牛肉では、若すぎて“マイルド感”が十分ではなかった」と安部会長は振り返る。そのため、吉野家の牛丼では思ったような品質を発揮できなかったという。

その後、2009年12月に松屋(松屋フーズが運営)が牛めし並盛りの定価引き下げを断行。それを受けて、牛丼大手3社は定価の値下げのみならず、期間限定値引きによる熾烈な“低価格戦争”に突入した。

当時、松屋が牛めし並盛りの定価を320円へ、すき家(ゼンショーホールディングスが運営)が牛丼並盛りの定価を280円へと引き下げたことに対し、吉野家は定価380円を維持した。松屋とすき家の既存店売上高が好調に推移するなか、吉野家だけは2009年2月期以来、13年2月期まで5期連続での前年割れが続いている。

“うまい、安い”については強み発揮できなかった

「“うまい、安い、はやい”という吉野家の強みのうち、“うまい、安い”については、十分な強みを提供できていなかった」と安部会長は説明する。

そうした中で今回、2月に米国産牛肉の輸入規制が緩和され、月齢30カ月以下の牛肉を輸入できるようになった。

輸入対象となる米国産牛肉の割合は、従来の20%未満から90%近くまで拡大するといわれ、「事実上、月齢問題は解決した」と安部会長は強調。10年近くにわたって続いてきた、吉野家にとっての牛肉の供給問題は終わりを迎えた。

月齢緩和で、吉野家の考える最適な肉質の牛肉が確保できるようになったことにより、「うまい」が改善。これを契機に、吉野家は牛丼の定価についても10年前の水準に引き下げ、「安い」点も強みとして打ち出し、競合を追撃する構えだ。

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