後でクヨクヨする人が知らない「決断」の本質

感情マネジメントと経験で大局観を身につけよ

実はプロの棋士たちもまったく同じ方法で手を考えます。プロといえども人間ですし、試合では制限時間がありますから、あらゆる手をしらみつぶしに考えることはできません。

よって直観、すなわち「速い思考」によって大半の選択肢をまずは切り捨て、残った手が本当に正しいのか、絞り込んだ手のなかでベストのものはどれかを、「遅い思考」によって論理的に検証しているのです。

通常、判断の質を上げたいと思ったら、選択肢を「増やす」ことをイメージするかと思います。ただ、それは選択肢が決定的に少ないときの話です。仕事の経験や知識、情報の入手ルートなどが増えると、選択肢もどんどん増えていきます。そういったときは逆に選択肢を減らす、つまり、「じっくり考えるために、考えなくてもいいことを捨てる」ことが大事なのです。

それを行うのが「速い思考」であり、直観なのです。直観を下支えするものは膨大な経験値であり、しかもそれはすべて言葉にできるものではありません。

普通、「思考」というとあくまでもロジカルな、つまり言葉で論理立てて説明がつくものをイメージしがちですが、実際にはプロの知恵のうち、言葉や論理で置き換えられるものはほんの一部にすぎません。

逆に言えば論理的に考えるだけではせっかくの膨大な経験を活用することはできません。もちろん大半の人は論理的な思考ですらおぼつかないので「遅い思考」を意識する必要がありますが、決して万能ではないのです。

断定的な予測にはまらない

「力をつけたいなら経験を積むに限る。だから失敗を恐れずにいろいろ挑戦していけ」

これまで上司や先輩から何度も言われたことがあるかもしれません。「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という格言もあります。こうした言葉はなんとなく理解はできても、実際に経験を積むと何がどう変わるのか、イメージできる人はなかなかいないのではないでしょうか。

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しかし、先ほどのアルファ碁のメカニズムを知れば、「経験を積め」というアドバイスは「ディープラーニングをして、直観の精度を高めなさい」という意味だとすんなり理解できるでしょう。経験を増やし、直観を鍛え、それをビジネスや人生の大事な局面で活用することは、後悔をしない人になるために欠かせません。

それと同時に、いくら直観を鍛えたとしても直観には限界があることを知ることが重要です。確実に予測できる未来など存在しません。このことがわかっていれば、自分の下した判断を信じ込み、その考えに固執することがなくなります。

固執しなければ、ミスが起きてもすぐに修正できます。逆に柔軟さを失った判断はいつか現実とのズレが広がり、大きなミスにつながります。

それに未来がわからないとわかるからこそ、「とりあえずやってみよう」という気持ちが湧いてきます。未来を確実に予測しようとする人たちは、将来が読めないことに一歩を踏み出す勇気が持てません。実際はやってみないとわからないのに、やらない理由だけを考えてしまうのです。

プロフェッショナルとは、何も100%の精度で物事を判断する人のことを指すのではありません。今ここで自分ができる最善の選択肢を考え、たとえ未来がわからなくても、ミスをしたときのリスクが許容範囲であれば勇気をもって決断する。そして仮にミスをしてもクヨクヨせずに即座にミスから学んでプランBを考え、行動に移すことができる。

このように考え、行動し続ける人。ミスをいたずらに恐れず、ミスを認め受け入れつつ、ミスを成長に変えていく人がプロフェッショナルなのです。

(お知らせ)9/27(火)に筆者の出版記念セミナーが東京・南青山で行われます

 

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