後でクヨクヨする人が知らない「決断」の本質 感情マネジメントと経験で大局観を身につけよ
「速い思考」は動物としてのサバイバルに必要不可欠です。地震を感じたら即座に安全な場所に走るといった選択は「速い思考」がなせる技です。人間の脳は、よく言えば「エコ装置」、悪く言えば「怠け者」です。人が意識をしなくても勝手に省エネ運転をしようとします。
「速い思考」は平時においては優秀な自動プログラムであり、実際にわれわれは日常生活の大半を「速い思考」に依存しながら満足して送っているわけです。
ただ、当然ながら「速い思考」も判断を間違えることがあります。頼りにするのは記憶(経験値や知識など)なので、記憶自体に偏りや誤りがあったり、情報が不足していたりすれば、間違った答えを出してしまうのです。
一方、じっくりと判断を下すのが「遅い思考」です。直感的に考える「速い思考」と異なり、意識的かつ論理的に判断を下すときに使われます。たとえば「19 × 37 =」を「速い思考」で解ける人はまずいないでしょう。「9かける7は63。7かける1は7。10倍で70。足したら133……」という具合に、脳を精一杯使って考えるはずです。
もし注意が散漫で脳が満杯状態であれば、十分な検討ができずに間違った判断を下すことは十分考えられます。
なぜ自分の判断に後悔することがあるのか?
ジャッジメントミスをなくす方法の一つは「速い思考」が下す判断を、逐一「遅い思考」で検証することで、身近な例でいえば次のようなケースです。
ランチタイムに何を食べようかと考えたら即座にラーメンが食べたくなり、決めた。昨夜テレビでラーメン特集を見たことの影響かもしれません。これが「速い思考」による判断です。
しかし、ここであなたは今週に入って塩分を摂りすぎている事実を思い出しました。気持ちとしてはラーメンを食べたいですが、体のメンテナンスのことを考えればそれは最善の選択ではないと結論づけ、有機野菜の美味しい店に行くことにしました。
これが「遅い思考」の効果です。「速い思考」を論理的に抑え込むことができます。
「なぜあんな判断を……」と後悔するときは、たいてい「速い思考」の仕業です。厳密に言えば「速い思考」に振り回されるのが人間であり、より理性的な人、自分を客観視できる人、または自分を律することが得意な人はこうした「速い思考」が下す、時に誤った判断を疑って、「遅い思考」を働かせることができるのです。
そもそも勝手に判断を下す「速い思考」と違って、「遅い思考」は意識しないと回路が動きません。よって「速い思考」が下す判断に従うことになんの疑問も抱いていない人は、「遅い思考」で検証する必要性すら感じないのです。
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