後でクヨクヨする人が知らない「決断」の本質 感情マネジメントと経験で大局観を身につけよ
最終的にジャッジメントミスを防ぐためには、ミスが起きる可能性を認めながらも迅速に意思決定をして、その代わりに絶えず見直しをすることで修正をしていくしかありません。かの『論語』には、過ちについて次のような言葉が書かれています。
「過ちを犯しながら、改めないのが過ちである」
「小人は過ちを犯すと、必ず、取り繕う」
過ち、すなわち、ミスの本質をついた深い言葉です。そしてミスに対する姿勢を教えられます。たとえば、二つ目の言葉は、「過ち」を「ジャッジメントミス」に置き換えるとこうなります。
「ジャッジメントミスを犯しながら、改めないのがジャッジメントミスである」
また、東京大学東洋文化研究所の安冨歩教授はその著書の『ドラッカーと論語』の中で、ドラッカーの経営学の最重要概念は「フィードバック」であるとし、そのマネジメント論の要点は次の3つであると主張しています。
② 人の伝えようとしていることを聞け
③ 自分のあり方を改めよ
これはミスを積極的に見つけ、それを修正することで成長に変えていく姿勢ともいえます。マネジメントとは自分のマネジメントであり、ミスを自覚し、なくしていく、終わりなきプロセスなのです。
「速い思考」を鍛えると「直観」になる
扱いの難しいジャッジメントですが、達人になる道は存在します。これまで悪者扱いしてきた「速い思考」をうまく使うのです。「速い思考」とは言い換えれば「直観」。言葉では説明できなくても「これに違いない」とひらめく、あの感覚です。
「速い思考」は感情に引っぱられた結果、間違った結論を導き出すことが少なくありません。そのために「遅い思考」による検証が必要だという話をしてきたわけですが、潜在記憶の量と質を上げて直観を磨くことで、「速い思考」の判断のスピードと質をともに向上させることが可能なのです。
「直観」と聞くと頼りないイメージがありますが、最先端科学の人工知能の研究においても、この「直観」の重要性が明らかになっています。これから多くの人間の仕事を奪うかもしれないとまで言われ始めている人工知能。これを支えている「ディープラーニング」は「直観」を鍛えているといっても過言ではないのです。
ディープラーニングでは論理ルールを作ってコンピュータに覚え込ませるのではなく、ひたすら膨大な生データ(ビッグデータ)を読み込ませ、コンピュータ自らが学習して判断できるようにさせたのです。
2016年に囲碁の名人を負かしたアルファ碁がどうやって手を決めているかというと、膨大な生データと学習で鍛えられた「直観」を使って選択肢をある程度絞ったあと、絞り込んだ選択肢のなかから最も効率的な一手を計算するそうです。
つまり、まずは「速い思考」を使って選択肢を絞り、その後、「遅い思考」で論理的に検証して最終的な意思決定を行うのです。
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